10月31日 ハロウィン外伝・ジュカインvs死霊術師?  編集:チェシャ猫


ハロウィンの喧騒が聞こえるカフェ店内。
しかしここはそのカフェから少し離れた、森の中。

「さて……霊関係って言ったな? 俺も大分その手は強いんだが、残念な事にチカラ的な能力は無いんだよな;」
適当に立ち止り、振り返ったのはクロ。
振り返ったその先には…
「はーっはっはっはー!まあそれっぽい演出だから。」
影を魔方陣のような形に展開し、死霊を模した影を飛び回らせ、更に高笑いしつつその中心から現れた、ヒイラギ。

何故このような演出をつけたかといえば、やはりハロウィンだから。
……要は仮装に基づいた演出。
ヒイラギはフード付きのローブに髑髏の首飾り、そして杖を持った死霊術師の格好をしているのだ。
一方のクロは悪魔に似た黒装束。黒い羽がマッチしている。

さて、そんな派手な登場をしたヒイラギを見てクロは苦笑。
「……さすが、だな; で、ルールはどうするかい? 俺は霊関係なら攻撃を当てられるスキルがあるけど、そのままバトルするかい?」

バトル。
…と言っても今始まろうとしているのはポケモンバトルではなく…一風変わった能力戦とでもいうのだろうか。
……模擬戦だけど。
「ん〜、まあ霊って言ってもぶっちゃけ影だから、普通にやれば当たるんだよね。物理攻撃。…ただしホントに体内に入り込んだりも出来る!と。」
今回のヒイラギの戦い方はRPGなどでよく見る、死霊術師の戦い方を影喰いの力で再現したものなのだ。

それを聞いたクロは、
「なるほど? じゃぁ、俺は実践どおりにやらせてもらおうかな。」
そう言うとコキリ、と首を鳴らして戦闘態勢になる。
そして余裕を見せるかのように…
「……さて、どうぞ? 」

対戦開始。

「ふふ、それじゃあ手始めに〜。」
どうぞ、と言われたヒイラギが杖を構えて、術師らしく呪文を唱える。
「…Kommen Sie in meinen Namen heruber…スケルトン!」
叫ぶと同時にばっ、と杖を振ると、足元から3体ほど黒い骸骨戦士が現れた。

これも影で作られた偽物…だが、性能は本物と大差なく作り出すことが出来る。
因みにこの呪文、「我が名に措いて出でよ」という単純極まりない言葉をドイツ語にしただけだったりするが置いておく。

さて、一方のクロ。
骸骨戦士を見るや素早くパッ、と距離を取り、
「ふーん。 んじゃぁ、こっちも手加減しないぜ!」
そう言い、スケルトンの1体に右腕でリーフブレードを放つ。
ぱきゃんっ!と小気味良い音を立てて、攻撃を受けたスケルトンの頭部が吹っ飛ぶ。

そこへ残り2対のスケルトンが、カタカタと音を立てながら迫る。

「……ふん!」
シザークロスでまとめて抜き際に倒そうと、クロは振り向き際に2体へダッシュ。
しかし今度は、そう簡単には行かなかったようで。
片方のスケルトンには見事に命中し、ぱきょん、と肋骨の辺りから吹っ飛ばしたが、もう片方のスケルトンが、手にしたサーベルで、クロの一撃を受け止めた。
「チッ……!」
しかしクロも早い。受け止められた直後、そいつへ思いっきり蹴りを入れて、吹き飛ばそうとする。
流石骨と言うか、軽ーいので簡単に吹っ飛ぶスケルトン。

しかし。

「はーっはっはー、セオリー通りそう簡単には倒れないのだ!」
そう、相手はアンデッド。今度は頭部のない、最初に切られたスケルトンがサーベルで切りかかったのだ。
「!」
回避が間に合わず、サーベルが直撃してしまうクロ。

でも安心、手合わせなので当然刃は無し、切られてもざっくりいったりはしないから。

…さて、一撃を食らったクロは素早く距離をとり、
「……うん、しぶといな。 んじゃぁ、俺もそろそろマジで行きますか……」
そう、呟く。

「さあ、如何する!?」
ヒイラギは楽しそうに杖を突きつけつつスケルトンを操っている。
頭部のない一体はかちゃっとサーベルを構え、先程吹っ飛ばされた一体がかくかくと起き上がり、真っ二つにされた一体が上半身で這いずっている。

クロは頭部のない一体を睨み、
「……。」
直後、一瞬光に包まれて……そこには、背中に漆黒の翼を持つジュカインが立っていた。
「……さて、ショータイムの始まりだ。」
3体のスケルトンをそれぞれ見、不敵に笑う。

「お。」
それを見たヒイラギも楽しげに。
身動きの取れるスケルトン2体がじり、と距離をとって構えている。

先に動いたのはクロ。
「……!」
右手にシャドボを1つ収束させ、素早く2体のうち頭部のあるほうへ放つ。
シャドボは、ばきょんっと、簡単にスケルトンの上半身を吹っ飛ばす!

もう一体のスケルトンがカタカタと、その隙を突くように駆け出して、サーベルで切りかかった。
しかし動作はそんなに速くない。骨しかないし。

「遅い!」
叫び、サーベルを素早い動きで回避し、リーフブレードを放つクロ。
行動可能なスケルトンはあっという間に砕け、消滅してしまった。
「むう!;」
唸るヒイラギ。
上半身だけで身動きの取れなかった最後のスケルトンが、最後とばかりにサーベルを投げつけたが、
「!」
首を捻ってギリギリで回避され、再び収束させたシャドボによってあっさりと撃破されてしまった。

「むう〜;。」
口を尖らせて、ちょっと残念そうなヒイラギ。いい歳こいてとかは禁句。
だが切り替えは早い。
「…じゃあ今度はこんなのはどうだー、Kommen Sie in meinen Namen heruber…ドラゴンゾンビっ!宣言どおり!」

因みに「宣言」とはこれが始まる前にカフェでぼやいていた言葉。
この戦闘思いつきの発端でもある…けどあまり関係ないので詳しくは割愛★

…げふごふ。

「Kommen Sie in meinen Namen heruber…ドラゴンゾンビっ!」
そう言って杖を振り上げるヒイラギ。
その足元から出てきたのは……
「……ほう、こっちの方が強そうだな。」
ぼろぼろに腐ったゾンビと化した、ぶよぶよの黒いドラゴン。
ご丁寧に腐った臭いまで再現されている。
「こいつは耐久力あるぞっ!」
ドラゴンの硬さとゾンビのしぶとさを持ったアンデッドなのだ。

クロはDゾンビを見上げつつ、軽くリズムを取るように小さくジャンプ。タイミングを計っているのだろうか。
先程のスケルトンのサーベルが当たったのか、右頬の目の下辺りが微妙に赤くなっている。

「いっけ〜!」
今度先に動いたのはヒイラギとDゾンビ。
Dゾンビはぶふーっと生臭い息を吹いている。
「ドラゴン・ブレスっ!」
ブレスの指示を受け、腐臭のする高温の息吹を吹きつけるDゾンビ。

「 ……酷い臭いだ;」
「しっかり腐肉まで再現してみました。」
えっへんと胸を張るヒイラギ。余計な所は凝り性。

その間にもクロは、相殺狙いで、息吹へシャドボを放つ。

…しかし。

「マジかよ!?」

通り抜けてしまったのだ、シャドボは。
なにせブレス…息なので、ぶつかることなくシャドボは貫通。
Dゾンビはシャドボを、クロはブレスを受ける羽目になったのだ。

「……げほっ;」
ブレスは熱い、しかしそれ以上に臭かったらしい…。

一方のDゾンビはぶふーっと息を吹き、大したダメージは食らっていないように見える。
タフなのか鈍感なのかの判断は微妙な所。

そしてヒイラギ。久しぶりに能力を使いまくってテンションが上がっているのだろうか。
「『火炎放射』とは違うからね、相殺は難しいぞっ、さあどーするかね!?」
実に楽しそうにのたまう。

「……だったら、相殺は狙わなきゃ良いだけだろうが!;」
今度はクロの攻撃。Dゾンビの前足へ急接近し、シザークロスでの攻撃を狙う。
「しかしドラゴンな上にゾンビだぞっ、打たれ強さには定評がある!」
何の定評があるのかは知らないが確かにDゾンビは「堅い」。
前足に直撃した攻撃は、切っているのではなく鈍器で殴ったような感触を伝えた。
「ぎゃぶうぅぅ…」
とDゾンビは吠えるが、杖を掲げたヒイラギの
「…押さえ込め〜っ!」
という指示に鈍重ながらも直ぐに従い、ずるっと体を動かし、クロを尾で叩きつけようとする。
「……意外と硬いんだな!;」
その尾を素早く避けるクロ。目標を外した尾は地面を打った。

「…………何が面白いんだか」
…ぽそりと呟いたのは、いつの間にか少し離れた木の上で、観戦中だった、オルム。Dゾンビをチラッと見ると、
「……死体使う意味は何処にあるんだろ。維持かかるわ言うコト聞かせるのは生きてる時より面倒だわ、プラス無いのに」
言っちゃなるめぇ。

一方戦いの様子。
尾を掻い潜ったクロは、その尾へリーフブレードを放つ。動きの鈍いDゾンビには直撃。
「むう!;…やっぱスピードが難点…!;」
「……もう一丁……!」
直撃したものの切るには至らなかった尾を見、クロは更に攻撃を加える。
前後に大きくスキができてしまうがかなりの威力を込めた、渾身のリーフブレード。
Dゾンビの方もやはりその隙を見逃さず、
「…ぶふぅぅぅ!」
と鼻息荒く首を曲げクロの方を向き、
「ドラゴンブレス〜っ!」
ヒイラギの叫びと共に、高温息吹を放った。
再びお互いに受けてしまう。

ここでオルムの一言。
「……一発で森粉砕するくらいの、出せば良いのに。ドラゴンなら」
……色んな事情で無理ですよ?

再び対峙する事になった双方、ドラゴンはぶしゅうっと鼻息を噴き、クロは呼吸を整えつつ、シャドボのエネルギーを溜め始める。
o0(……あのブレスが厄介だな……;)「……ふぅ、ふぅ……」

そしてDゾンビを見ていた、再びオルムの一言。
「……よっぽど小さいのか、大して腐敗してない時に取ったのか。……まあ、そもそも影だから無駄な思考なんだけど」
その通りだよふははh・・・・・・

さて、此処で先に動いたのはヒイラギだった。
「むー、…溜めてるねっ、…今のうちにー!」
クロがシャドボのエネルギーを溜めているうちに、Dゾンビに指示を出した。
「ぶごおお!」
と吠え、どすぐちゃどすぐちゃと、片前足を引きずりながらクロに迫り、反対の腕で凪ごうとする。当然鈍重な動きだが。

・・・と。
「…………。……あのさ。ヒトの趣味にケチつけるのもなんだけれど。もうちょっと、まともな姿にさせたらどう?」
「へ?;」
オルムが、思わずヒイラギに声を掛けた。こちらも思わず顔を向けるヒイラギ。

だがその一方、勿論戦闘は続いているわけで。
「……クッ!;」
クロは直径80センチ程度になった瞬間にDゾンビの顔へ向けシャドボを投擲、そして、腕に薙ぎ払われ、近くの木へ突っ込む。
「ガ……ッ!;」

「趣味で戦わせているようなものだから、それで良いかも知れないけど。疑われるよ? 死体愛好の趣味でもあるのか、って。……まあ、実際にあって、しかも広めたいと言うならもう何も言う事はないけど。色んな意味で」
「はい!?;……ってあーゾンビ〜!;」
…オルムに気を取られている間に、指示も何も無く見事に頭に直撃し仰向けに吹っ飛ばされるDゾンビ。
「…ぐがあ……」と唸りつつ、もがもがと仰向けのまま蠢いている。

そんなDゾンビを見て、
「…それとさ。私に話しかけられたくらいで、注意逸らすなんて、いくらなんでも注意力散漫すぎない? 何、机に向かって3分で寝るクチ?」
そう言うオルム。理不尽だ。
「寝ようと思えば寝れるけど…じゃなくて!;いや行き成り声掛けられたら気は散るでしょ!?; 」
文句を言うヒイラギ。…寝れるのか。

それは兎も角貴方達、まだ戦闘中ですよ?
Dゾンビもひっくり返ったままなのに…。

「……。」
そして、肩で息をしているも、立ち上がりDゾンビを見据えるクロ。
「……コレで、終わりだ!」
宣告し、渾身のリーフブレードをDゾンビの腹目掛けて放つ。

「私の所為? 注意も何もなく、公共の場で一方的に始めておいて、反応した自分を差し置いて? ……というか、仮に非があったの私だとしても。注意逸らしたの、貴方だから」
「いやだから…って、あ〜!;」
そりゃそれだけ気を散らしてれば強烈な一撃を食らいます。
「がぶう……!」
腹に直撃を受けたDゾンビは消滅してしまった。
ゾンビ消滅と同時に、充満していた腐臭も消える。
「……はぁ……はぁ……;」o0(……終わった……)
ゾンビの消滅を見て、その場に座り込むクロ。

一方のヒイラギは、
「……ついでに言うなら。気が散るって解って、しかもそれで痛い目にあってなお逸らすなんて、割と学習能力ないよね。初心に帰って、サルを見習えば?」
「酷い!?;」
毒を吐かれていた。

さて、気を取り直し。
「……ま、まあ…どう、練習になった?」
クロを見てヒイラギが言う。
「あぁ、とても良い練習になった……。」
クロも返す。
そしてオルムが、
「……で、御疲れ様。割と面白かったよ」

こうしてハロウィン否普通バトルは終了した。
……何かS氏がメイドに運ばれそして台車で運ばれていく光景を見たような気がしたけど、
「……な、何か凄くシュールな光景が見えたような気がしたけど気のせい、気のせいと言う事で……」
by、ヒイラギ。