8月12日 2010年夏祭りバトル!(第2試合 アーメスタ VS ラスティ) 編集:Rista
湖で行われたライブが大成功を収め、まだどこか興奮の冷めない翌日の昼。
別の意味で熱気にあふれた火山の上に3匹のポケモンがやってきた。ドーブル、ミロカロス、そしてリザードンという顔ぶれである。
ドーブル「(火山にやってくると、拓けた平らな場所へ)ここらへんかな?」
ラスティ「・・・そうだね・・・(ドーブルさんについてきて・・・辺りを見渡して・・・)」
最初に説明しておこう。
まずドーブルは琴牙が変身した姿である。研究者、ブリーダーなどいろいろな顔を持つ彼は本来人間のはずだが、気分なのかポケモンの姿でカフェに顔を出すことも多々あるのだ。 だから人間じゃない疑惑を持たれてるのに……
一緒に来たリザードン、こちらはラスティが姿を変えたもの。彼は普段はブイゼルとして認識されているが、何か思うところがあるのか、カフェで“変化の杖”を使ってからこの火山の上までやってきたのだった。
そして唯一いつも通りの姿をしているのが、ミロカロスのアーメスタである。
ドーブル「(ラスティと距離をおいて)それじゃ、先行と後攻はどうしようか。(審判がいないけどどうしようかと思い出した)」
ラスティ「・・・(先攻は・・・ゆずってもいいよ・・・と、いって・・・審判はどうしよう、と考えて・・・)」
ドーブル「審判は…どうしようか。」
アーメスタ「わいは個人で戦う。主人がやったらどや?」
ドーブル「ラスティちゃん、どうしようか。」
ラスティ「・・・(アーメスタさんの案にのるよ・・・と、ドーブルさん見て・・・アーメスタさん見て)」
出された提案に異論はない。どこからともなく現れ審判役を買って出る人もいない。
そんなわけで、今回琴牙は参加せず、トレーナーのつかないバトルとして行うことになった。
さっそくトレーナーの定位置を離れるドーブル。
ドーブル「じゃあ…。(二人の真ん中にある岩の上にたち)アーメスタたいラスティ、試合開始!!」
アーメスタ「ほないくで!!(まずはハイドロポンプを一直線に発射!!)」
合図が出るや、先攻のアーメスタが攻撃開始。水タイプの強力な技をまずはストレートに。
ラスティ「・・・(ためらうのは・・・無しだからな・・・)」
自分に言い聞かせて、ガゥ、と一声吼えたラスティ。
ハイドロポンプが周りの空気を押しのけた風圧をうまく利用し、ひらりとかわすと、そのままハイドロポンプにそってアーメスタの前へ走っていく。
どうやらリザードンの姿での戦闘にはある程度慣れているらしい。
アーメスタ「ほう、ならこいつはどうや!!(スーパースプレッド!!と叫び、口からものすごい勢いの白い霧を放射状に放つ。だがそれは攻撃としての威力はかなり高い!!)」
本来、白い霧は相手の技で能力を下げられないようにする防御の技。しかし霧とはすなわち細かな水滴の集まり。近づいてくる相手へ勢いよく噴射すれば、その水圧は十分に攻撃となるのだ。
ラスティ「・・・(さっそく来たっ・・・)」
攻撃の動作を見たラスティはすぐに止まって、後ろに回避しながらエアスラッシュを放った。さらにそこへ火炎放射を当て、起こした風に乗せて炎を広げる!
ぼふん!
派手な音を立て、炎と風に衝突した霧は相殺された。
だが……
アーメスタ「相殺、だけじゃあかんで?」
じわり、と。
そう、水を熱すれば水蒸気になる。それはぶつかり合った一帯に拡散してフィールドの湿度を上げ、炎の威力をじんわりと弱めていった。
アーメスタ「なかなかがんばるな。かっこええで。」
賞賛の言葉。だがもちろん、ほめられてもラスティは気を緩めない。
ラスティ「・・・(・・・早く、霧をどうにかしないと・・・そうだ!)」
何かを思いついたらしい、空高くに飛んでいく。
アーメスタ「ほう、空に逃げるか。でも甘いでー。(口をもごもご。そしてラスティが飛び上がって少ししたところで)氷雨!!(バウッと口から大量の氷柱を吐き出した!!)」
この場合の氷柱は「つらら」と読む。
ミロカロスはつららばりを覚えないので、恐らく冷凍ビームの応用として身につけた芸当なのだろう。
ラスティ「・・・(・・・またきた・・・)」
一方、迎え撃つ側は再び、エアスラッシュから火炎放射のコンボを放つ。しかし拡散された火炎放射は氷柱を溶かしきれず攻撃がラスティを直撃したかに見えた。
が、さほど大きなダメージにはならなかった。それもそのはず、火炎で氷柱の先端だけが見事に溶かされ丸くなっていたのだ!
アーメスタ「氷雨くろうてもあわてず騒がずダメージ軽減か…。おもしろい、おもしろいでぇ…。」
ラスティ「・・・(・・・よし・・・)」
氷柱を軽減しつつも羽ばたきはやめず、大分高いところに上がって来たラスティ。アーメスタの真上に来ると、大きめにエアスラッシュを放った。
見た目、威力は十分。しかし彼の攻撃はそれだけでは終わらなかった。
自ら放ったエアスラッシュの後ろにぴたりとついて、自分自身も真下のアーメスタへ突撃を開始したのである。
――スリップストリーム。
高速で走る物体の真後ろでは、その物体に押しのけられた空気が渦を作って周りのものを引き寄せる、という現象である。
走るものはどうしても空気の抵抗を受けるため、その抵抗を振り払って前に進むのに力を使ってしまう。しかしこの現象を起こしている物体の真後ろにつけばその物体を風よけにして抵抗を減らせる上、渦に引き寄せられる力を使えば、小さなエネルギーでより強く加速することができる。
主にモータースポーツや自転車競技、スピードスケートなどで使われるこのテクニックを、ラスティはポケモンバトルという場で見事に取り入れ――エアスラッシュと一体化したかように、さらに加速していく……!
ドーブル「すご…。(ラスティのバトルセンスをみて)」
アーメスタ「ならうけとめたるで!!(パキパキパキ、と突如体が氷に包まれていく。しかもトゲトゲしい鎧のようで!)」
審判のポジションから目を見張るドーブル。
一方アーメスタは迎え撃つ体勢を取った。長い体に氷の棘を巻き付け、ふくらませていく。
しかしラスティの勢いは止まらない!
ラスティ「・・・(氷なら行けるっ・・・!)」
エアスラッシュに火炎放射を加え、さらに強まった加速はものすごい勢いを生み出した。そう、まるでフレアドライブのような状態でアーメスタに突っ込んでいく――!
バスンッ!!
アーメスタ「おぐう…;」
数メートル吹っ飛ばされ、アーメスタの身体が地面を転がっていく。防御に長けた種族、しかも炎タイプの攻撃はいまひとつのはずだが、今のは効いたらしい。
程なく起き上がった彼は今までとはどこか違った顔つきをしているようだった。
アーメスタ「ラスティはん、いまのあんさん強くてシビレ…いや、炎タイプやから燃えそうやね。…わいもそろそろ本気でいこか…!!(口をもごもごしだした)」
ラスティ「・・・(息を切らして、ぶるっと体をふるって・・・アーメスタさんを見て)(・・・来る・・・)」
相手の表情を見たからだろうか。その行動から来るだろう攻撃をおそらく予想しながら、ラスティは次に備える。
アーメスタ「さっきのと同じと思わんことやで…ミストブレス!!(ブゥウウウ!!と先ほど放ったスーパースプレッドよりもはるかに強力な霧のブレスを吐き出した!!氷の破片も混じり、水と氷の二つのタイプの強烈な範囲攻撃!!)」
今度は水と氷の複合技。水滴に混じった氷の破片は(ただでさえ当たると地味に痛いのに)先ほどよりも勢いを増してラスティに襲いかかる!
ラスティ「・・・(行け、耐えるんだっ・・・)」
ミストブレスを直に受けながら、でもラスティはアーメスタにもっと近づいていく。走っていく!
もちろんアーメスタも黙って迎え撃つはずがない。ブレスを吐き続けながら両ヒレにも冷気を集め、氷の剣を生み出した!
ラスティ「・・・(氷の剣を見て・・・ステップを踏んで、できるだけ勢いを付けると、アイアンテールで氷の剣と一騎打ち!)」
叩き込まれたアイアンテールを、アーメスタは一本ではタイプ相性的に折れると判断したのだろう、両方のヒレを使って受け止めた。
氷の剣と鋼の剣が正面からぶつかり合い、鋭い音を立てる。
両者とも、一歩たりとも譲らない……!
アーメスタ「1時間ももう少ししかないなぁ…!!(ギリギリギリ、思いっきり振り切ってラスティを弾き飛ばそうと!)」
ラスティ「・・・(させない ・・・今しかないからっ・・・!)」
2本分の力を込め、振り切ってきたアーメスタの勢いにラスティは乗せられない。尻尾を振って、弾き飛ばす力を上手く回転に変えて受け流す。
そしてアーメスタの近くに踏みとどまることに成功すると、電撃をまとった拳をアーメスタに叩きこむ! ……かみなりパンチだ!
アーメスタ「んな!(まさかの雷パンチに自慢の長い体の回避が間に合わなかった。直撃するとパーン!!というショート音。だが)こ…なっくそお!!(若干のけぞりつつも、ゼロ距離からのハイドロポンプ!!だがマヒがあったのか、威力は若干落ちている)」
ラスティ「・・・ぐあぁっ・・・!(かみなりパンチに精一杯で、ハイドロポンプを避けきれずに直撃して・・・遠くに吹っ飛んで!)」
さすがに至近距離攻撃の直後に逃げ出すには時間が足りなかった。
近づいた分だけ大きくダメージをもらったラスティの体は軽々と吹っ飛ばされ、バーン、と遠くの岩にぶつかって止まった。
アーメスタ「ヘェ…ヘェ…い、いまのはちょいと効いたわ…;(ふらり。マヒもあるのでもはや自由にうごけない)」
よろめくアーメスタ。
雷パンチの追加効果で動きが鈍くなっている彼の視線の先で……ラスティは、ばたっと倒れている。
ミストブレスとハイドロポンプのダメージが効いたのだろう。もう立ち上がる体力は残っていない様子だった。
ドーブル「(ラスティみて。そして片手をあげて)…勝者、アーメスタ!!」
双方の状態の差は歴然。
本来の役割を忘れていなかった審判は、迷うことなく片手を上げた。
試合終了である。
アーメスタ「ぜぇ…ら、ラスティはん…お強いなぁ…。」
起き上がってはいるが、かなり息が苦しそうな様子。その姿が何よりも勝負のすさまじさを物語っていた。アーメスタが最後まで耐え切れたのはタイプ相性と種族柄の耐久力が幸いしたからだろう。
ラスティ「・・・(・・・負けちゃった・・・か・・・でも・・・まぁ、いいよな・・・)」
こちらも荒い息のまま横になっている。
それでも何かを得たような、満足したような、そんな表情をしているようにも見えたのは気のせいだろうか……?
※試合には負けてしまいましたが、巧みな戦術が高く評価され、ラスティが総合得票1位を獲得しました。