2017年8月8日 夏祭りバトル!葉のように舞え!  編集:Rista

夏真っ盛り、島はおなじみ夏祭り。
恒例のポケモンバトル大会は一ヶ月間で18試合が行われ、個性豊かな面々が腕を競い合った。

これはそんなお祭りの一場面。
2017年大会のMVPに選ばれた熱戦の記録である。


場所は森の広場。ポケモンバトルのために整備された定番のフィールド。
そこへやってきたのは……

ヒイラギ(後に出ておいて、先に着く。何しろ影から直通でやってきたので。 すぽっと木の影を抜けて、フィールドに向かい。)
ツバキ「(真っ暗で遮るもののない広場――見通しが良い、ということは隠れる場所も無いという事か)これは……些か、不利やもしれぬ(いやいや、戦う前から言い訳を考えてどうする。すたっ、と木々を飛び移りながら広場に降り立った後で気付いたヒイラギの影)あれ――ヒイラギ殿?」

金髪と色白な肌に黒いロングコートというコントラストが際立つ、この大会の常連であるトレーナーのヒイラギ。
そして青緑の忍び装束をまとい、首から鉢金を提げた少年忍者。ツバキである。

ヒイラギ「やあ、お先に着いたよー!(ふんふんと手を振って。)…別の場所の方が良かったかな、広場やり辛い?(先に居た分、相手が周囲を見ている様子は見えていた。)」
ツバキ「(不思議な面持ちでヒイラギの方へと歩いてく途中、彼の気遣いに頭を下げると首を振るい)いいえ、戦いとはいつ何時起きるか分からぬ物ゆえ……どのような場所でも全力で挑むのみでござる(と、言い切った。うむ、と言い聞かせるように一つ頷く)」
ヒイラギ「りょーかい、(そういう事であれば、遠慮はしない。広場にあるフィールドの定位置にトレーナーは立って、いつの間にか手に持っているボールを1つ、腕を真っ直ぐ伸ばして掲げ見せる。)どっちが先に動くかはコイントス(という名の2d6で大きいほう、)で良いかい?」
ツバキ「ヒイラギ殿の仰せのままに(コイントス、という単語は知らないけれど公平なものなのだろう。ヒイラギが動いたように、反対側の定位置へ向かい、振り返る。初めて見るモンスターボールに、瞬きを一つしつつも、おおよそ予想はついた。あの道具でポケモンを使役しているのだろう。自分はそんな道具は持っていない――自分が、戦うのだから)」 (2D6 → 1 + 6 = 7)
ヒイラギ「表か裏か、そうだな、適当に投げるから、表だったら君が先手で動こう。(手元に現れた、コインを指で弾く。不正防止か、自分の手で受け止めるのではなく、そのまま地面に落っことす形で。)」 (2D6 → 6 + 1 = 7)

落ちたコインは……なんと、地面に直立してしまった! これではどっちが表で裏かわからない!

ヒイラギ(なんということでしょう…お互いにもう一度振りましょう…) (2D6 → 4 + 5 = 9)
ツバキ「投げたコインが立つ――ということもあるのですね(もう一度、投げ上げられたコインを見上げた。夜の向こうでも、目は捉えている――)」 (2D6 → 5 + 2 = 7)
ヒイラギ「ちょっと地面に凸凹あったかな……(さっきまで戦場だったし。改めて投げたコインは裏向きに落ち、) …んー、こっちか。」
ツバキ「ヒイラギ殿から、でござるな。(結果を認めた。ぱん、手を合わせて印を結ぶ。夜の広場の一点に淡い光が灯れば、縮む光と共にツバキのいた場所に佇む――色違いのキモリ)」

おお、変化の術。これがニンジャか。
でもびっくりするところはそこじゃなかったようで。

ヒイラギ「なるほど、キモリ……素早い相手だけど、捕らえられるかな。(ぽん、と投げ上げたボール。)」
アサルム「なに、やらばやれるってな!(ずん、とどっしりした体躯を構えた、ゴロンダだった。)」
ヒイラギ「アサルムちゃん。」
ツバキ「(驚かれなかった、よりも、逆にこっちが驚いている。ボールの機構を始めて視たのだった…あんな小さな球から、あれほどのポケモンが出てくるなんて――じゃなかった。今からバトルなのだ――正面から正々堂々。慣れないタイプの戦いではあるけれども、ぐ、と足に力を込めて構えながら、キャモゥ!と力強い鳴き声と共に吠えた)――参られよ!」

両者とも準備が整ったようで……
先攻はヒイラギ。各5ターンの制限つきバトル。開始!

ヒイラギ「それじゃ行かせて貰うよ……アス、」
アサルム「判ってる、捨て台詞はこっちじゃ中々、な!(声に応える様に、ずしりと脚を肩幅に開き、両腕を徒手で構える。ぴくぴくと咥えた葉を揺らしながら、ぎゅうと体に力を込めた。心なし一回り大きくなったような「ビルドアップ」された体躯で、ツバキの出方を見る。)」
ツバキ「(四つん這いに身を低めて草むらに少しでも紛れようとしている。力を蓄えるその様を認めながら)……早さで乱されるよりも、待つ構えと見た…そうよな、叩くには近づかざるを得ぬ……だが…!(ぐ、と手、もとい前脚に力を込めると力強く地面を蹴り「こうそくいどう」! 身を低め、暗い夜闇にその姿を捉えるのは難しい――が、あちらこちらで土を蹴る音。風で揺れるものとは違う草の音が聞こえることだろう)

アサルム「(模様に隈取られた目は相手を追っているのかいないのか、首を曲げて追う様子は見せない代わり、咥えた葉を止め風に揺らす。そのままジリ、と脚を僅かに開き、握って構えていた拳を解いた。)」  ヒイラギ「…。(相手の速度が増しているこの時、トレーナーはといえば余り心配そうな様子は見せず。)」
ツバキ「(周りをざん、ざん、と「こうそくいどう」を重ねながら跳び、跳ね、駆けまわる。目の動きは負えないが、音で地面の方へと意識は向けられたはずだ――アサルムの後ろ、ヒイラギの前で一際強く地面を蹴る。そのまま真っ直ぐ背中を突く――ではなく、構えた両手に緑色の閃光を蓄え、彼の頭上を飛び越えながらその脳天へと叩き落とす――「エナジーボール」!繰り出した後はアサルムの正面に降り立つ形になる。後方の足音と、自らを囮にした心算だ!)」

アサルム(後ろの足音、の後、跳ぶ為に踏み込んだ動きを、「咥えた葉っぱ」の揺れが逃さずアサルムに伝える。この葉の揺れで相手の動きを読むという種族がゴロンダであり、故にトレーナーも素早く動く相手に対して、速さで劣るのを不安には思わなかった。)
ヒイラギ「足を奪え!(短くそれだけの指示が飛び、)」
アサルム「(上体を捻り、エナジーボールを頭ではなく、分厚く盛り上がった肩で受ける。)うぉ、うっっと!!(そのまま捻って持ち上がった方の腕を刈るようにツバキに向け、待ち構えた姿勢から放つ「ともえなげ」は、地面に叩き落すのではなく、相手を交代させるでもなく。代わりに空高く、足場の無い空中へとツバキを投げ上げる軌道!)」
ツバキ「(ゴロンダと言う種族を始めて知る身。そのような種族の特性は知らず、まだ気づくことも出来なかった――ただ、しまったという感覚。足を捕まれるとは思わなかった。自分の体躯ほどの大きさを持つ腕に捉えられては、逃れることは能わない。叩きつけられる。グッと身を縮めたが――)うっ――わああああっ!?(ぶおん、投げ上げられた。クルクルと回る体勢を、尾を伸ばした分の空気抵抗で立て直すと、真下の地面に向けて一発、二発、三発とアサルムを狙って『エナジーボール』を繰り出し続ける!やがて落ちる頃、或いはアサルムが近づいてきたときには身を縮め、背を丸めてクルリと丸くなる!)」

アサルム「う、おっ…(ビルドアップ、で上がるのは防御であって特防ではない。連続で食らっては溜まったものではない、と落下位置から逃げよう、として、)」
ヒイラギ「最後は経費!」
アサルム「(また飛んだ、主語も目的語も無い指示に。)相ッ変わらずだな乙女相手にァ!!(吼え、緑の光球に突っ込む。避ける気だった最初の数発は兎も角として、最後の1発、連射の間隔によっては2発を「経費」で受ける羽目になる。) らっ、(ぎぎ、と牙を擦り合わせて耐えながら、丸くなったツバキの尾を掴もうとする。上手く捉えることが出来れば……)っしゃアアアアッ!!(相手の足を跳ね上げるよ脚払いのモーションをかけると共に、背負い投げの要領で頭から地面に叩き落す――相手が如何防御を取っていようと必ず急所に当たる技、「やまあらし」を仕掛ける!)」

ツバキ、どうやら掴もうとしている尾で技を繰り出そうとしている! (2D6 → 3 + 2 = 5)
振り降ろされる尻尾を掻い潜って、上手く掴み上げる事ができるかどうか! (2D6 → 1 + 5 = 6)

ツバキ「(足の踏み場もない場所では、ただ真っ直ぐに落ちるのみ。右も左も道が無いのなら、残る道はただ正面――アサルムの拳しかない。エナジーボールの雨が止む。見るからにパワータイプの種族の、足元ほどの体躯のポケモンが力勝負を挑むなど愚の骨頂だということぐらい、分かっていた――)――南無三ッ!!(が、回転し、ありったけの力を込めて振り下ろした尻尾の「たたきつける」!がーー)ッ……(押し負け、掴まれた!アサルムの咆哮に、今度こそとグッと身を縮めて衝撃に備えるが――)――キャモォォッ!!(甲高い悲鳴のような鳴き声と共に、脳天から叩きつけられる!急所に当たった! 一回、二回と地面をバウンドしてゴロゴロと転がり……)……ぐ、ぬ…(よろり、ぐらり、震える膝を抱え、尾を杖に体を支えながら立ち上がる――が――)……キャ…モゥ…(ふにゃ、と力が抜けたように目を回し、仰向けに倒れ込んだ――戦闘不能!)」

試合終了! 勝者、アサルム!

ヒイラギ「…乙女って言うか漢女だろ、お前は…。(数十cmの小柄な相手に対して、2mを越える熊の膂力は見た目に痛ましかった。)だっ、大丈夫かい!(両手で筒を作って声をあげ。)」
アサルム「(フシュウー、っと息を整えて、襟を正すように頚元の毛を整える。)」
ツバキ「……ギャァ…モォゥ(すっかり目を回して気絶している。ヒイラギの呼びかけに答えられる様子でもなく…ゲットするとしたら絶好の機会なのだろうが、彼にボールが効くのかどうかは謎である()」
ヒイラギ「(流石に、付き合っていただいた勝負の直後にボール放る程図々しくは無かった。)やっぱ頭からは拙かったのでは!ただの脳震盪だといいんだけど!(アサルムの横を通って小走り、ツバキの状態を診に近づく。)」
アサルム「やまあらしを搭載したのも自分だろうがよ。(のすのす、とその後からゆっくり歩いて続いた。)」
ツバキ「(呼吸はしっかりしている。ヒイラギがたどり着き、アサルムが辿りつくころにうめき声と共に、今一つ焦点の定まらない目で見上げ)……あれ、ヒイラギ…殿…?(少しずつ焦点が定まってきたところで、アサルムの姿もハッキリと捉えた。ぷは、と息をついて)あぁ、そうか…某の負けでござる…」
ヒイラギ「ああ、良かった、大事は無さそうだ…(一先ずは動かしても大丈夫そうだった、背を支えて起きるのを手伝おうとする。)」
アサルム「ああ、流石に素早い身のこなしだったなあ。空中に放られて、其処からこっちを狙えるもんなのか。(ツバキの隣に屈んで…と言うよりはヤンキー座りで。)」
ツバキ「かたじけない…ヒイラギ殿…(ふらり、よろり、支えが無いと立つのは難しそうだ。ヒイラギの手と、自分の尾を支えになんとか立ち上がり)……これでも、一介の忍びが故。されど、掻き乱す手を封じられればこの通り、手も足も出ませなんだ…尾は出せましたがーーっと(と、ひょいと尾を上げた所でバランスを崩して尻餅を一つ)」
ヒイラギ「ゴロンダって見た目脳筋っぽいけど、エーフィみたいに空気からの行動予測が出来るんだよねえ。(意識は戻ったが体力は戻っていないらしい、元気の欠片くらいなら奢れるよ、と黄色い結晶を取り出してみる。)」
アサルム「まあ、私も筋肉はあるがァ悪タイプ、って事よォ。(爪でわしわしと腹の毛を掻く。)」


ただ力があるだけじゃない。ただ器用なだけじゃない。
技と技が交差する熱い戦いだった。
両者に最大の賛辞を送りたい。