2019年3月23日 【未来の使者 決戦直前幕間】夕日の約束  編集:カゲロウPL

(これはある決戦前の、ちょっとした幕間。
夕日の海岸に黄昏れていたのは、カゲロウとコスモスだった。)

カゲロウ
「……この場所の夕日って、こんなに綺麗だったんだな。」

コスモス
「……そうだね。」

(二人並んで、水平線の彼方に沈み行く夕日を見ていた。)

コスモス
「……いよいよ、今夜で最後だね。」

カゲロウ
「……そうだな。そういえばさ……。」

コスモス
「…………?」

カゲロウ
「この戦いが終わったら、君はどうなるんだ?」

コスモス
「………………。」

カゲロウ
「もしかして、未来に帰るのか?」

(しばしの気まずい沈黙。そして、少女は観念したように口を開いた。)

コスモス
「…………うん。それがセレビィとの約束だから。
使命が終われば、もとの時間に帰る。
本来なら肉体を捨てなければ越えられない時間を、セレビィの力を借りて今の時間に肉体ごと跳んできたの。」

コスモス
「時を越えるときの制約って知ってる?」

カゲロウ
「……ううん、知らない。」

コスモス
「……じゃあ、良く聞いてね。今後何かの役に立つかもしれないから。
まず始めに、さっきも言ったとおり、肉体を捨てなければならない。
時間は心だけしか越えられないから。」

カゲロウ
「……でも、それって。」

コスモス
「うん、下手をすればハートレスになってしまう危険性がある。次に、越えた先に自分が存在していなくてはならない。つまりは、この時間の私がいないと、私はこの時間には来られないの。」

カゲロウ
「……じゃあ、今の君は……。」

コスモス
「……多分、まだ赤ちゃんの頃の私だと思う。でも、セレビィの力を借りて時間移動をしているから、もしかしたら生まれていないのかも。」

コスモス
「そして、三つ目は越えた先からは時間の流れの通り一方向にしか進めない。
つまりは、過去から未来に行きたい場合は一旦もとの時間に帰らないといけない。
あとは最後に、その時間で起きる事実は書き換えられない。
つまりは、運命を変えることはできない。」

カゲロウ
「……意外と制約だらけなんだな。」

コスモス
「でも、うまく使えば過去に何があったのか、未来で何が起きるかを知ることができる。
過去は変えられないけど、これからの未来は今という時間から変えられるかもしれないかな。
もちろん越えた先の未来では変えられはしないけどね。」

コスモス
「これはあくまでも本来の時間移動の事だから、セレビィの力の時間移動はこれに依らない力。
つまりは……」

カゲロウ
「……しようと思えば、運命は変えられる。」

コスモス
「そういう事ね。でも、みだりに時間律を乱してタイムパラドックスを起こしてしまうと、何が起きるのかは分からない。
だから、この時間移動は人に委ねてはいけないもの。あくまでセレビィが持つべき力といえるのかもね。」

カゲロウ
「……なるほどな。
時間移動にも、種類があったんだな。」

コスモス
「そう。
今回はセレビィからこの時間に招かれたからできた時間移動であって、これは本当に特例中の特例なの。
その特例の猶予期間は次の闘いが終わるまで……かもしれない。」

カゲロウ
「……かもしれないって……。」

コスモス
「……もし、セレビィが許すならば、今夜の戦いが終わってから少しの間ならいられるかもしれない。すべてはセレビィ次第。
だから、今のうちにお別れは済ませておきたいかなって。」

カゲロウ
「……何言ってんだよ。
別れだなんて、そんな……。」

コスモス
「……ごめんなさい。
でもこれは初めから決まっているの。
未来の者は本来、過去に干渉してはいけない。
そのルールを守らなくてはいけないの。」

コスモス
「……でも、今は一度別れても、また会える。
その約束がある限り、いつか、貴方に会いに行ける。」

カゲロウ
「(ポケットから約束のお守りを取り出す。
そのお守りは、自分のダーク化コピーを倒した後にもらったものだった。)」

コスモス
「……その約束が、絆だよ。」

(そして、夕日のなかでしばらく泣いた。
それは夕日に照らされた、儚い約束。)

Dearly Beloved