星と電気ネズミに願いを  作:優莉 投稿日時:05/6/10(06/4/22 修正)


「ライ……ライチュ…。」
ボクが今居る場所はトキワシティ。
ふいに上を見上げる。
視界に映るは夜空。星や月が綺麗に光ってる。
そして、何故か昔の事を思い出すんだ。



ボクとボクのトレーナー、優莉が出会った場所は、今居るトキワシティの近くにあるトキワの森だった。
あの頃の優莉は少し幼くて。
其の頃のボクはピカチュウだった。

「キミって、野生のピカチュウだよね?」

出会ってから、そう、唐突にその少女は訊いてきた。
フワッとした少し癖のある黒髪。そして黒目がちな瞳。
……うん。今と変わってないな……。
その時、ボクは勿論、コクリと頷いた。
初めて会った時は少し怖かった。
だけど、そのうちにその恐怖心も無くなっていった。
少女がボクに、撫でたり触れたりしなかったからかも知れない。
別に、撫でられても良かったのに。とか今では思う。
兎に角、いつも喋ってばかりいた。
なのに、少女が自分の名前を名乗ることは無かった。ボクがその少女の家族の一員になるまでは、ね。

…ある日、ボクが野生じゃなくなる時が来た。
その少女がボクを捕まえた。普通にモンスターボールを投げられて。
ボクは半ば、混乱状態になりつつあったけど。
そして次に瞳を開けた瞬間からボクは、少女、優莉の家族となった。
少女の名前を知ったのは、捕まえられた後だった。
「あたしは優莉。宜しくね、ピカチュウっ。」
優莉はそう言って、優しく微笑んだ。
捕まえられた所為で、また少し恐怖心が出てきてはいたけど、その笑顔を見ただけで不思議と治まったのだった。

それからボクはピカチュウと呼ばれるまま、ライチュウに進化し、ウィッシュという名をもらった。



それで、今に至るんだ。
…え、ボクの家族?勿論、居たよ。
でも別に会えないから寂しいって訳じゃないんだ。
今でも、家族に会いたいって言えば優莉が森に連れて行ってくれるし。

「…あ、こんな所に居たんだ。」
ボクの後ろにある、優莉の家のドアが開かれる。
そして中から優莉が出てきた。
「ライ……ライチュッ。」
ボクは夜空を指差す。綺麗だねっ、と。
「……うん。トキワの夜空は今日も綺麗だねっ…。」

ボクの名前はウィッシュ。
優莉は星に何を願うのかな……。


…END…