俺の主人はお嬢様?  作:ルビー 投稿日時:05/6/24(08/8/19 修正)


待った待った待ったストップ無理ありえねえぇーっ!?;;
そのときの俺は、今までにないくらいに、
そしてまたやれといわれても二度とできないような驚異的スピードで首を横に振っていた。


<俺の主人はお嬢様?>



楽しく気ままに過ごしてきた野性ポケモン時代。
それに終止符をうった人間の女の子。それが今の俺のトレーナー、ルビーだった。
アイツと出会った頃はまだ男勝り一歩手前のおてんばな女の子だった。
どこにでもいそうな女の子にゲットされる。よくある話だ。


………だーけーどー。

ヤツには信じられない秘密があった。
それを話して聞かせてもありえねえって否定するヤツもいる。が、実際ありうるわけよ。
俺も最初信じられなかった。だって、ルビーは全然どこにでもいない女の子だったんだ!
どういうことかって?つまり、こういうことさ―――。



『ジュララ〜♪(おかえりなさいませ、ルビーお嬢様〜♪)』
「ウイジェ、ただいまー。」
これが、はじめてルビーの家に入ったときに聞いた会話。
いろんな意味で威圧感バリバリなルージュラが、玄関の大きな扉を開けてルビーを迎え入れた。

町でも普通に見かける、そんな立派に見えない服で、つーかむしろがさつな方向で、
髪もそろえずバサバサになっている俺のトレーナーは、
そのメイドさんルージュラ(ウイルジェールっていうらしい)をあっさりと受け流して家に入った。
聞き間違いなのかそうでないのか…ルビーは、いわゆるお嬢様イメージとはほど遠い。
ポケモンの言葉で“お嬢様”といったルージュラの声が頭を占領してしまった。

当時はトレーナーについた経験もなく、人間の用語(?)にうとかった俺だけど、
一応食料調達とかいたずらとか(ぇ)で、ときどき町に出てみたことはある。
“ひと”ってのは着てる服や持ち物の豪華さ、あるいは住処の大きさで権力があるかないか……
つまり、金持ちかどうかってだいたいわかることを、俺は知っていた。
ルビーのは、特別立派な服に見えないし、高そうなものを身につけてるわけでもなかった。

クエスチョンマークが頭の中でくるくる回っていたけど、
とりあえず俺はルビーについて家の中に入った。


「ね、ライナ。なんか食べる?疲れたからおなかすいてるんじゃないの?」
はじめて捕まえたポケモン…いわゆるファーストポケモンって相当大事なんだな。
そのころの、まだ子供らしさが残っていた(別名でかわいかった、ともいう(何)
ルビーのまなざしが、俺にそのことを教えてくれた。
とりあえず、腹が減ってたのは事実だし、ルビーを見上げてうなずいた。

それで、木の実がいくつかもらえるくらいだって思ってたんだけど。
予想外に出てきた大量のそれらを見て、俺は目を輝かせた。
『ピカァー…!w』
「遠慮しないで。いっぱい食べていいよ!」
目の前に、いい香りのなんか……料理がいっぱい並んだ。数え切れないくらい。
“さんどいっち”とか、名前を知ってるのもあったけど、はじめて見る食い物もいっぱいあった。
こんなにいっぱい、しかも好きなだけ食えるのが夢みたいだ!

『ピッピカチュw ピカー!(んじゃ遠慮なくw いただきまーす!)』
おもいっきりほおばって、噛んでみて。味がとろけてた。

うーまーいーっ!!(ぉ

「よかったー、食べてくれて;
森育ちだから、そういう人が作った食べ物は苦手なんじゃないかって心配だったんだ;」
『ピカチューw(もぐもぐ)』
苦手なんかじゃねぇ、マジ、全然!
野生の時は“さんどいっち”ひとつ取るのにも命賭けてたくらいだからな。人の食い物は基本的にうまいもんだ。
まだ慣れないトレーナー付きポケモンとしての生活。
食い物がいっぱいあるなら、まあいーか?みたく軽く考えた。
あー、うまいよこの料理ー♪(ぁ


その日の夜。俺のベッドはモンスターボールの中かと思いきや外だった。家の庭の木のうろ。
かーーっなり広いその庭には二羽ニワトリが(殴)…じゃなくて、
知らないポケモンがたくさん放し飼いにされていた。
聞いたところによると、ルビーの親や兄貴のポケモンをみんな放しているらしい。

別に窮屈でもないし、飯はうまいし、ルビーもわりといいヤツだから、サイコーじゃん?w
……でもそれが………甘かったんだ。

『ジュージュラルー♪(念力発動』
庭で昼寝をしていた俺は、いきなり拉致(違)された。
『なっ、なんだよこれっ!?;』
『ラーイーナーさん♪レッツおめかしターイム!ですのよんw』
『……は?;』
『あ、来りゃいいって話なわけですの。こっち来いですわーv』
『Σ待っ……意味不明だしおろせウイジェーっ!!;』

余裕の笑みで鼻歌を歌いながら、ウイジェことウイルジェールは、
念力でふわふわと俺を拉致(だから違)していく。じたばたもがいたけど無駄だった。
むかった先は、家の奥の、俺の入ったことのない部屋だった。

『何、ここ。』
『お・ふ・ろ……ですわでございますわー♪(念力解除』


ザッッパーーーン!!



「待った待った待ったストップ無理ありえねえーーっ!?;;」
ずぶぬれ状態の俺は逃げ回っていた。文字通りのぬれねずみだ。
「風呂入らされて泡飲み込んだってのに(ぇ)その上こんなのつける気か!?;」
「当然ですわ♪タキシードをお断りになった以上、これくらいはへっちゃらでしょおw」
ウイジェが手に持っているのはメイクセット。
人間がペタクタやってるのを、見たことがある。
何で人間の服かっこピカチュウサイズ版をわざわざ着なきゃなんないんだと拒否ったらこういう展開になった。

「どこがどうへっちゃらなんだーっ!?;」
「香水、素敵ですわよ?いい香りですし、絶対かっこよくなれますってばw」
俺は充分カッコイイからいらねぇっ!;」
強引だ、強引すぎるっ!
こうなりゃ電撃で……と思ったそのとき、ドアの向こうで叫び声がした。

やだっ!;こんなヒラヒラ着たくないよっ!;

『プックリーンwプク、プクリンw(似合いますですwお嬢様、かわいらしいですよw)』
「ああもうっ…! あたし、こんなの着ないっ!;」
『プックー……(しかたないです……/ドア開けて顔出し)ウイジェさーん?』
ぽっちゃりしたプクリンが、ドアを開けてウイジェを呼びに来た。
いや、もともとプクリンはぽっちゃりしてるけどそれ以上な感じに(何

なんにしたってラッキーっ!!

『あらマリーネ?どういたしまして?w』
『お嬢様が文句おっしゃるんですー;交代していただきたいですー?』
『あらまあまあ!いいざんしょ、わたくしがやりますわ。ライナさんをお願いw』
『わっかりましたですーw』
そーっと部屋を抜け出そうとしてた俺だったけど、あっさりマリーネ…メイドプクリンにつかまってしまった。
せ、せっかくのチャンスが!?;

『さ、ライナさーんw かわいくなりましょーですーw(香水を手に)』
こいつも危険ポケだーっ!;
むしろルビー以外に危険じゃない輩はいないのかここには!?
マリーネから逃げだそうと突破口がないかキョロキョロしていたその時、
ドアのむこうから…すさまじい威圧感を感じ思わず気をそらしてしまった。

この一瞬が命取r…ってうぎゃーーっ!!;(…



―――30分後。
『…ァ…ハァ、ハァ……ま、負けた……;(ぐったり』
マリーネのやつ、なんであんなにタフなんだ……負けたぜorz

『ライナさんすてきですー!かっこいいですかわいいですうつくしいですー!w』
『う、うるさい……;;(ぐてーっ)』
俺は“ピカ・クリーム”とかいうポケモン用のメイクアイテムで
テカテカにされ、香水も嫌になるくらいかけられた。それから最初に拒否ったはずのタキシードも着せられた。
そして、いつの間にかドアの向こう側も静かになっていた。


『さぁて、できました♪お嬢様のおめかし完了ー♪』
ドアが開いた。ウイジェと、もう一人。
髪が真っ直ぐさらさらで紅いドレスを着た見たことのない女の子が部屋に入ってきた。

さんざん酷い目に遭わされて、加えて見知らない人間を見たもんだからコイツも敵か!?と思って本能的に電気ショックを放った!
……言い訳しよう。本能というモノは考える時間を与えてくれないのである。
しかし電撃はなんなくウイジェの念力で打ち消されてしまった。

『ピッカァ……!(←完全に攻撃態勢/ぁ)』
「ほらぁ、ライナもわかってくれないよウイジェ;やっぱおかしいんだー;」
『ジュラ、ジューラルー♪(まあ、そんなことござぁせんよ♪)」
『プクリンーw(すてきですきれいですーw)』
『ピッ!?;(えあっ!?;)』

……………。


あのひらひらドレスの異常すぎで逆に怖いと感じてしまうほどかわいい女の子がルビーだと、
俺のトレーナーだと、認識できるまでにしばらくかかった。
あんなことされたのは、あの日がはじめてだった。

だって、風呂入ってシャンプーでわしゃわしゃーって…(何
野生から人の世界に慣れてもいないのにいきなりやられたら心臓麻痺るから絶対!;(ぁ

アレが、ルビーの手持ちポケモンになって、はじめて体験した悪夢だった。



……して、現在。

『ライラーイ…』
「嫌な予感がする。最高に嫌な予感というかすでに予感ですらない運命的な何かを感じるよライナ、わかるだろ?」
『ライライチュウ。』
隣から話しかけてきたトレーナーに対して、思わず頷く。
目の前にそびえるのは芸術的レリーフが刻まれた扉。
そう、俺たちは“そこ”にいた。
「ぱ、パーティは辛いけど今日一日だけだ。耐えようぜライナ。一緒に。
『……チュウ(……え゛)』
ごめんルビー俺帰っていいかな。
本気で回れ右しようと思った。トレーナーに対する裏切りも辛いがなんつっても自分大事。
しかし決心する前に扉が開いてしまった。

『おっかえりなさいませぇ愛しのルビーお嬢様〜w』
『お待ちしてましたですよですー♪』

出迎えるウイジェとマリーネ。予感は運命となって俺たちに襲いかかろうとしている。
だってあの時もパーティがあったんだ。俺のはじめての悪夢がよみがえる…。


その後、俺たちは断末魔のごとき叫び声をあげるのであった。
めでたしめでたし。………じゃねえよっ!!;(ぁ