三日月の夜  作:ウェル 投稿日時:05/7/6


「・・・三日月?」

黙って歩いていたウェルが、ふいにそういった。
今日は三日月の夜。

「あーあ・・・。三日月は・・・ティナとの出会いを思い出すよ。」

あたしはクチートのティナ。
ウェルの・・・パートナーなんだ・・・。
あたしとウェルが出会ったのも、こんな日だったっけ・・・。





確かあの日は・・・研究所にいた。
静かで、仲間はいなくて、寂しい場所。
あたしがここにいる理由は・・・研究資料にされたから。
いきなりでわけわかんなかったよ・・・。

「はぁ・・・。」

ため息は毎日のようにでる。
そして、窓から外を見た。
・・・・・・外にでたい。
自由になりたい。
仲間と話したい。
でも、今のあたしじゃとても無理で。
涙が目から溢れるばかりだった。

―――――あきらめたらだめだよ。

女の子の声がした。
あたしはあわてて顔をあげた。
窓の向こうには、5歳ほどの女の子がいた。

「ぜーったい!ぜーったいあきらめたらだめだよっ!
あきらめたら、そこでおわりだよ!」
「・・・なんであたしを励ます?あんたもあたしを仲間から引き離した、
人間じゃないか!」

あたしは声を張り上げた。
人間には、「くちーっっ!!!」って叫んでるようにしか聞こえないんだろうけど。

「わたしはねぇ、にんげんじゃないんだぁw」
「・・・へ?」

あたしは驚いた。
人間じゃないってことに。
・・・いや、あたしの言葉がわかっているほうが驚いた。

「だから、クチートちゃんの言葉もわかるの。」

女の子は笑ってそういった。
あたしの涙はもう止まっていた。

「ばいばい、クチートちゃんwいつか、そこからだしたげるね!」

女の子はそういって走っていった。
・・・これがあたしとウェルの出会い。