大きな力と小さな軍隊 作:爆風 投稿日時:2013/12/21
ギディオン「互の軍から何匹か交換して経験を積ませる交換留学ってのは。それなら貴様の実践や戦場でのキャリアにつながる。」
交換留学、か…
ドン「…此処が、俺が所属する軍事基地だ。」
ギディオン「…ちいせぇ扉だな…中の施設や兵器もどーせ大した事無いんだろうな。」
(ドンはギディオンを連れ、白い、壁を沿って、一つの巨大な門の前に来た。ドンの何倍も大きいギディオンはその壁越しから基地の中を覗く。)
ドン「まぁ、ギディさんの所と比べたらそうだろうなぁ…;とりあえず上層には連絡はした。さっさと司令室に連れて来いってさ」
(ギディオンの様子を見上げ、目の前の門へとドンが調子近寄り、付近のカメラに目を合わせる。暫くして扉が自動で横に移動し、門が開かれた。)
ギディオン「…とりあえず聞いとくわ、此処はどんな所なんだ。」
ドン「ここはポケルディアって国…人間ってのは存在せず、ポケモンだけの世界。…他には?」
ギディオン「…此処の軍についてと、ポケルディア国に関するもっと詳しい説明。」
(門の先を行くドンをギディオンがそれに気付いてついて行き、目の前の壁が左右に開かれた。)
ドン「軍は国が出来た時から出来たらしく、俺が生まれる前までは戦争ばっかりで負けは無かった国らしい。沢山の国を領地にしてたらしいが…20年前ほどにボロ負けして全ての領地を奪われて以来ポケルディアは戦争を起こさなくなった。ポケルディア国はその後全ての国と相手の国に絶対に攻めない約束を結び、今に至るってわけだ。」
ギディオン「なるほど、つまり調子乗って戦争を起こし続けたら負けちまったと。…つかそんな条約結んだなら、軍は必要ねぇんじゃないか?それなりの設備や兵器が揃ってるしよ。」
(基地内の薄暗い廊下を続き、窓越しから見える倉庫内に止められた戦車や装甲車両が月明かりで微かに照らされている。無数ヘリポートに止められた機銃を搭載したヘリが止められ、その遥向こうの岸には32門の砲台を積んだフリゲート艦停泊してるのが見える。)
ドン「…俺に言われてもわからねぇよ。昔の名残じゃないか?」
ギディオン「名残り、か…」
(ドンの長い説明を聞き、頭の中で整理しながら外の様子を横目についていき、窓がない通路が続いて正面を向けば丁度ドンが止まり)
ドン「さてと……ここが司令官が…といっても会議室だけどな。この先に大将さんが待ってるぜ。」
ギディオン「さて、どんな奴かお楽しみだな。」
(ドンの正面には廊下の蛍光灯で薄く照らされた両開きの扉。ドンが入るには大きすぎ、ギディオンが通るには丁度の大きさ。それに一歩ドンが寄り、背後のギディオンに向いてからドアを叩く。)
ドン「…第二攻撃中隊長のドン曹長!先程お話しした人を連れてまいりました!」
「よし、入れ。」
(扉の向こうから聞こえる声。ドンが扉を開きギディオンがそれに続いて中にはいる。部屋の奥まで続く縦に長いテーブルに居座っていたドサイドンが目を細めてギディオンを見る。)
ガルシア「…ほう、まだこんな強いのが居たのか。…ガルシアだ、このとおり陸軍大将。普段通り楽にしてくれ」
ギディオン「デギィオンだ、別の世界から来た。」
ガルシア「…別の世界?詳しくしてもらえるかな。」
(ギディオンが放った言葉に首を傾けると後から入ってきたドンに目を向ける。)
ドン「ハッ!ギディオン殿はポケルディアに発生している霧の向こうから連れてまいりました。」
ガルシア「霧の向こう…数ヶ月前に調査で現地に向かった事はあったが、あそこは何故か島らしき場所に繋がっている。お前さんはそこの人なのか?」
ギディオン「…島についてある程度知ってるなら話は早い。あそこには同じように霧から他の世界から人が集まる場所だ。俺はその島に発生してる霧の先から来た人だ。」
ガルシア「…ここの霧は島に繋がっていて、島の霧はさらに他の世界に繋がっているか…で、その霧の向こうから来た人が俺の軍に何の用だ?」
ギディオン「そうだな。ドンから軍やこっちの状況を聞いて一つ案を持ってきた。…兵の交換留学だ。こっちの世界の兵とあんたの兵を一定期間交換して経験を積ませるのはどうだ?戦争が起きない国にとっては実戦の機会だし、お互いに交流の機会にもなる。」
ガルシア「留学か…そっちがかなりドンパチやってる国ならこの上ない良い話だが、こっちはどうする?ドンから話を聞いている通りポケルディアは戦争どころか抗争が一切ない。こんな平和な場所に兵を送られてもなぁ…」
(ガルシアが頬付しため息を吐く。扉の前でやり取りを見守っているドンが恐る恐る口を開き)
ドン「ガルシア大将…話に入り込むようですが、彼等にはジム巡りでもさせたらどうでしょう。ポケルディアはバトルに対してはかなりの物です。ギディ殿の世界や他の世界にも足を踏み入れた事はありましたが、バトルの盛り上がりに関してはポケルディアを上回る所はありませんでした。」
ギディオン「…という事だ、こっちから送る兵に関しては前線から帰還した兵や訓練兵を送るつもりだ。休暇ついでの気分転換やこっちの世界の戦闘を叩き込んでくれ。」
ガルシア「ギディオン殿が言うのなら遠慮なくそうしてもらおう。こっちから送る兵はそちらの指揮下に入れて前線に出しても構わん。むしろ実戦をさせるのが遅いくらいだ…ただ最初の交換留学については俺自らが行こう。指揮官が現地の情報を知らないで兵を送るのは良くない。…最後の戦争から暴れてなくてな。」
ギディオン「…戦死してもこっちは責任は取らんからな。んじゃ交渉成立とみて良いな?」
ガルシア「戦死だなんて馬鹿言っちゃ困るな…交渉は全面協力のつもりで頼む。」
(先程から奥で居座ったままのガルシアが席を立ち、ギディオンの元まで来ると手を差し出しお互いに手を取り合う。ギディオンが片腕で敬礼を行うと一歩下がり、向きを変え扉に向かう。ドンがそれに合わして扉を開くが、ギディオンが扉の前に止まり、ガルシアに振り向いた)
ギディオン「おっと、最後に質問がある。…お前ら大きさもそっくりだが親子なのか?」
ドン「…は?」
ガルシア「っ…ガハハハ!面白い事を言うなギディオンは。ドンは俺のお気に入りなだけよ!ドン!ギディオンを霧とまで送っていきな!」
ドン「りょ、了解!」
(質問にドンはきょとんとするが、ガルシアはそれを牙を見せ笑い返す。それを見たギディオンは肩を竦めて開いたままの扉を出た。それを追うようにドンはガルシアに敬礼を行うと部屋から出で扉を閉める。)
ドン「ギディさん…何言ってんだ…;」
ギディオン「お前があいつに似てるのが悪いんだよ、嫌なら痩せろ。」
(牙を見せ、ニヤリと見下ろすとドンの頭部に拳骨を一発落とし、会議室を背にドンを連れ薄暗い基地の廊下を歩いて行く。)