温泉旅行に行こう!  作:いちご&蜻蛉 投稿日時:2017/07/23

よく晴れた土曜日、風鈴の心地よい音が鳴る縁側で、スイカを傍らに雑誌を読む1匹のジュナイパーがいた。
「おいフィオナ、そんな暑いところで何を読んでいるんだ?」と、カシウスが声をかけると、フィオナは振り返り、カシウスに雑誌を見せた。そのページには、見開きで前号の懸賞応募の結果が掲載されていた。「懸賞?フィオナ、お前いつの間に応募したんだ……?」と、呆れた様な口調でカシウスが聞くと、「ジョウトの抹茶ケーキが欲しくて応募したんだけど。」と、フィオナが立ち上がって、雑誌の一部を指差した。「もっと他にもいい商品があるじゃないか…。しかもケーキ当たってないじゃないか。」と、ほれ、とカシウスが雑誌をフィオナに返すと、フィオナは「見るところが違う…!」と、雑誌をカシウスに投げつけた。カシウスがため息混じりに懸賞ページを再び見ると、大きく写真が載せられた、今回の懸賞の大当たりに相当する『温泉旅行』の当選者の位置に、『フィオナ様』と書かれているのだった。

「本当に僕でいいんですか……?」と、見せられた宿泊券を前に、赤い長髪の少年が目を点にしている。「そう。たまには羽伸ばしも必要でしょ?行く?」と、フィオナの問いに対し、ハカセと呼ばれた少年は「ま、まさか…2人で、って事です…か?」と、やや動揺している様子を見せる。「この宿泊券、4人まで大丈夫なんだって。だから私とカシウスで二人分。貴方とメラとで二人分、って事だけど。」と、フィオナがため息混じりに言うと、「デートではないんですね……。でも、ありがたく参加させてもらいます。」と、複雑そうな顔をするのだった。

旅行当日、ハカセ達がカシウス邸に集まっていた。
「すみません、お待たせ致しました。」そうハカセはカシウス一行に声をかけると、
フィオナは「大丈夫、それほど待ってないわよ。」と返事をする。
メラは「フィオナさん、うちの主人をわざわざ誘っていただき、ありがとうございます。」と頭を下げている。
フィオナは「いえいえ、いいのよ。羽を伸ばしたかっただけだから。」と答え、
カシウスが「それで、旅行先はどこなんだ…?」とフィオナに聞く。ハカセは「プールはありますかね?」と楽しみにしている。

「これから行くところは……これよ。」と、フィオナは『温泉町奏楽』と書かれたパンフレットを広げた。「おんせんまちかなで……こんな所あったか?」「カシウスは普段出かけないから知らないのよ。さ、行きましょ。」と、車に荷物を積み始めた。「こんなにアクティブなんですか、フィオナさんって……?」「いや……人が変わったみたいだぜ、ハカセ……。」「フィオナさんも女性ですから……。」男性陣はただ、フィオナに荷物を預けて車に乗るしかなかった。

ジュナイパーの運転する車に揺られて30分後、一同は温泉町奏楽の門の前にいた。中々人気な様で、かなり混雑していた。「うわぁ……混んでるなぁ……。」「それほど人気って事よ、ハカセ。チケット枠の受付は別にあるのよ。こっち。」と、フィオナについて行く一行。
無事に和風の旅館のチェックインを済ませ、自分達の部屋に入ると広い畳の部屋に人数分の布団が敷いてあった。
「フィオナさん、枕投げしましょう!えいっ!」ハカセが笑顔で枕をフィオナに投げつけると、フィオナがその枕をキャッチし、投げ返すと、
キャッチしたハカセが小さく吹き飛ばされた。カシウスが「おいおいおい、あまり旅館で暴れるなよ…」と二人に注意する。
フィオナは「だって、ハカセが急に投げて来たから…」と、ハカセは「だからってフィオナさんがそこまで強く投げる必要は無いじゃないですか?」
と小学生みたいな言い合いをしているのを見かねたメラが「はいはいはい、せっかく温泉の旅行に来たのですから、温泉に入りましょうね。」と言い、
ハカセとフィオナはメラとカシウスに着いて行く形となった。

ハカセ一行は移動して、大きな温泉があるところに向かった。
脱衣所でハカセ、カシウス、メラはフィオナと別れ、
かけ湯をするところで会うことになった。

「おっ、フィオナだ。」「フィオナさん、待ってましたよ!良い湯があったんですよ!」「ハカセはこういうところに目ざといですからね…」
男性陣三人のところにフィオナが来た。フィオナは「へえ、良い湯って何よ。興味なかったら…」フィオナがそう言う前にカシウスが「いや、フィオナ、ハカセの言ってることに偽りは無い。10人のフィオナがいれば、必ず10人共気に入ると思うぞ。」
フィオナは「そう…言ってみなさい…」 ハカセは「蜂蜜風呂」と思わずどや顔する。
数秒間思考停止していたフィオナが我に返り瞬時にハカセを抱き上げると「それはどこにあるの!?」と興奮気味に聞いた。
ハカセが「えっと、その…あっちの方」と指を指すと瞬時にハカセごと連れて行き、蜂蜜風呂の方へ向かった。
メラとカシウスは滑らないように歩きフィオナを追った。

蜂蜜風呂にて。「い…いやあ、フィオナさん。風呂場で走るのはやめましょ…?滑ったら危ないですし、人にぶつかっても危ないですし…」
フィオナは下の蜂蜜色の湯を見て目をキラキラさせている。「うん、話聞いてないですね。うん。ただ、濡れて滑りやすい床であのスピードを出せるのはすごいと思いますよ。」
と自称疾風迅雷のハカセは褒めていた。いや、本来褒めちゃいけないところなんだろうけど。
メラとカシウスが遅れてやってくる。「フィ…フィオナ…滑るし人にぶつかるから危ないぞ…」とカシウスが注意するも、やっぱり聞いてない。
カシウスは「ハカセも、フィオナと同じ反応するかと思ったけど、冷静だよな。」と蜂蜜風呂に入る。
ハカセはメラの高さでは底が深いためメラを抱きながらメラを蜂蜜風呂に入れながら「べ…別に僕はそこまで意地汚く無いですよ。それに、蜂蜜漬けならもうすでに経験してますしね。」
メラは「そういえば、カシウスさんも甘い物…好きなんですか…?」とカシウスに聞く。

カシウスは苦笑いしつつ、「確かに好きではあるが、フィオナに全部取られるからな……。」と、幸せそうな顔で風呂に浸かるフィオナをちら、と見た。フィオナは既に自分の世界にどっぷり浸かりこんでいるらしく、ハカセが「あの……大丈夫ですか……?フィオナさん……?」と、声をかけても反応せず、ちゃぷちゃぷと湯を跳ねさせていた。……結局、10分程度でカシウスの「……そろそろ他の風呂に行かないか?」の言葉で、男性陣は蜂蜜風呂を後にするのだった。

「ハカセ、そう言えばプールに入りたいとか言ってたよな?こっちの方にプールがあるっぽいぞ。」「本当ですか?一緒に行きましょう!」「馬鹿、もうそんな年齢じゃない!」と、必死に交渉するハカセだったが、カシウスはプールの隣にヒノキの桶風呂を見つけると、「こっちでゆっくり待ってるよ。靄で子供が怖がったら悪いだろ?」と、それっぽい理由をつけて逃げてしまった。メラが、肩を落とすハカセを「一理あると言えるし、仕方ないでしょ。僕が遊んであげますよ。」と諭すと、顔を曇らせつつもプールに向かうハカセ。しかし、そんなハカセの背中をちょい、と、フィオナがつついた。「ふ、フィオナさん!?もう蜂蜜風呂はいいんですか?」「後でまた入るわ。折角だから楽しまなきゃね。」一瞬で嬉しそうな表情になって、フィオナの手を引いてプールへと走るハカセ。残されたメラは、「単純だなぁ……。」と呟くと、後を追うのであった。

プールの中に入っていくハカセとフィオナ。
「フィオナさん!あのプールの端まで競争しましょう!」と提案するハカセ。「良いわよ。」とお互い定位置につこうとすると、遅れてメラがやってくる。
「すみません、遅れましたっていうか、ひどいじゃないですか!僕を置いてくなんて!」メラご立腹である。
「い…いやあ、すみません、あっ、これからフィオナさんとあのプールの端まで競争するのですが、メラも一緒にどうです?」と誘うハカセ。
メラは「別に構いませんが。」と答え、みんな定位置について向こうへ競争しだす。
ハカセがクロールで泳ぎ出しフィオナがハカセを追うように泳ぎ始める。二人の速さに泳ぐことを忘れて二人を見つめるメラ。
あと5mのところで、ハカセがバテて、フィオナが猛スピードで追い抜いて行く。
ハカセも負けじと必死に泳ぐもフィオナが先にプールの端へ届き、フィオナの勝利へと幕を閉じた。
メラは「い…いやあ、二人共速かったですね。本当にビックリしましたよ。」そうプールから上がり二人に駆け寄って行く。
色々遊んでるとフィオナのお腹がぐぅと鳴りハカセは「もうそろそろ、何か食べましょうか!さっき、ソフトクリーム屋を見つけたのですよ。」とメラを抱き上げフィオナの腕をとり、カシウスのところへ向かった。

「おお、フィオナ達か。もうプールはいいのか?」カシウスはそう聞くとメラは「フィオナさんがお腹を…」と言おうとしたところを
ハカセが慌てて遮り「いやあ、珍しい色のソフトクリームがあって食べたくなりましてね。カシウスさんも何か食べます?」とカシウスに聞くと
(フィオナみたいな理由だな…)と思いつつも「ああ、何か食べようか。」とみんなで食べ物を買いに行った。

時計を見れば、ちょうどお昼時だった。「どうせなら昼食にしようか。プールのスペースにテーブル席があるだろうしな。」と、一行は食事スペースに移動した。食事スペースは賑わっていたが、カシウスを送り込むとあっという間に4人分の席が手に入るのだった。「これじゃあ俺がポケモンじゃないか……間違ってはいないが……。」と、ため息をつきながら席の確保に徹するカシウスであった。

ハカセ、フィオナ、メラの3人は様々な店に目移りしていた。「うーん、どうしましょうか……。」と、悩むハカセを置いて、いち早く注文を決めたフィオナはメラを連れて注文をしていく。注文が済み、各々の決めた商品を持ったフィオナとメラがハカセの元に来た。「ハカセ、まだ決まっていないんですか?」「えぇ…。メラは何を買ったのです?」「僕はハンバーガーといちごのソフトクリームで、フィオナさんはチョコとバニラのミックスソフトを2つと、フライドポテトです。」フィオナは、両腕にソフトクリームを持ちながら、ほかの食べ物の入ったビニールを腕にかけていた。「カシウスは焼きそばとソーダアイスよ。早く決めないと先に食べているからね。」と、メラを連れていってしまった。残されたハカセは更にしばらく迷った後、バニラとソーダのソフトクリームと、たこ焼きを買って席へと戻るのだった。

「待たせて、申し訳ありません。」ハカセがソフトクリーム二つとたこ焼きを買って帰って来る。
「おかえりなさい、遅かったですね。」メラはそう言い、ハカセを席に着かせると、机にたこ焼きを置いてハカセがソーダ味のソフトクリームを食べ始める。
みんな、ハンバーガー、フライドポテト、焼きそばを食べ終わってアイスに手をつけようとしていた。
急いでハカセはたこ焼きを平らげ、フィオナに「一口ください。」と言った。フィオナは「良いけど、ハカセもちょうだい。」と言い、ハカセはソーダソフトクリームを差し出し、お互いのソフトクリームを一口ずつ分け合うことになった。
ちなみに、バニラソフトクリームは最後に好物を食べるハカセにって絶対不可侵な土地である。ようは好物だから分けてくれない。
フィオナが自分のスプーンで自分のミックスソフトをスプーンですくってハカセの口元にスプーンを近づける。
ハカセは「フィ…フィオナさん…?」と困惑しつつもフィオナのスプーンを口に入れた。「どう?おいしい?」とフィオナに聞かれ「う…うん、すごく美味しいですよ。」と頷く。
ハカセも自分のスプーンで自分のソフトクリームをすくい、フィオナの口元に近づけるてそれをフィオナが口に入れる。「おいしいわね。」そういうやり取りをしていた。
ハカセとフィオナを見てスネていたメラにハカセが「一口いりますか?」とソーダ味のソフトクリームを近づける。
フィオナもカシウスにミックス味のソフトクリームと一口交換するはずが、フィオナにほとんど食われるという案件があったが、
ハカセが絶対不可侵の好物の食べかけのソフトクリームを渡したことで解決した。

「再びみんなで温泉に漬かりましょうか。」ハカセはそう言いみんなと一緒に歩き出す。
メラが「この湯、良いじゃないですか?」そう呼び止めるとそこは美白の湯と書かれていた。
「いいわね。入るわよ。」と言い入ってくフィオナに続いて入っていく男性陣。
「…」みんな沈黙している。ハカセは「なんかこう、話をしませんか?」それに対してカシウスが「話って…何があるんだよ。」と言う。
「話なら…そうですね…暴露大会とか…?」ハカセがそう言い終わる前に「却下。」というメラの厳しい言葉が。
ハカセは「いや、暴露とまでは言わなくても、こうして僕達がいる訳ですし、一人ずつ僕に何か言ってってください。」
メラは「じゃあ、僕は参加しますよ。僕はいつもハカセを止めるのに大変でな思いをしてるので少し落ち着いて欲しいのですが、お二方はどうですか?」
とカシウスとフィオナに話を振る。

「ハカセに対してか……?俺はパス。特にない。」「そんな事言わないでくださいよ……何でもいいですから。」と、ハカセが押すと、カシウスは7秒ほど唸り、「……いつ見ても元気でいいと思うぞ。」と、面白味のない答えを出すのだった。「フィオナさんは何か無いのですか?」と、メラが聞くと、「また甘い物見つけたら教えて。」と、即答するのであった。

美白の湯に浸かり、綺麗な肌になった一行は最後にサウナへと足を運んだ。これはメラの、「サウナで我慢対決をしたい」という言葉のためであった。身体を乾かすのに時間がかかるフィオナを覗いた3人は早速サウナで、最下位の奢りの風呂上がりのジュースをかけた勝負を始めた。始めは互いに余裕そうな表情を浮かべていたが、15分後、とうとうカシウスがリタイアした。炎の巫女であるハカセとほのおタイプのメラは互いに粘ったが、ハカセが先にリタイアし、メラの勝利となった。やがて3人はフィオナと合流すると、約束通り、カシウスが買った4人分のジュースを飲みながら、部屋に戻るのであった。

「い、いやあ、楽しかったですね。」とハカセ。カシウスは「夕食までまだ時間があるな。」と言い、
ハカセは「トランプしません?」と提案する。メラは「じゃあ、ババ抜きをしましょう。」とハカセからカードを受け取りみんなにカードを配り始める。
「さーいしょーはグー!じゃーんけーんポン!」ハカセから時計回りでハカセ→フィオナ→カシウス→メラという順番でスタートすることになった。
ハカセがフィオナのカードを引いて、ハカセがカードを捨てる。フィオナがカシウス、カシウスがメラ、メラハカセがというように引いて二週が立った。
フィオナがカシウスのカードを引いた時、ジョーカーを引いてしまった。 フィオナは思わずハッとした顔になり、ハカセ達は「わっかりやす…」と心の中で呟く。
そして、ターンがまわってハカセがフィオナのカードを引こうとすると、ジョーカーにハカセの手が触れると引けと言わんばかりの眼差しを送って来たのでハカセは仕方なくジョーカーを引くことにした。
メラとカシウスが小声で「ハカセ、絶対ジョーカー引いたな。」「ええ、そうみたいですね。」というやりとえいがされていた。
そして、メラがハカセのジョーカーを引いてしまい、勝負の行方がわからなくなった。

結果はハカセが負けたが、ハカセはフィオナが勝てたのならそれでいいやと思った。
ハカセが「今度は大富豪しましょう。8切り以外の特別ルール無し、イレブンバック無し、都落ち無しでやりましょう。」
ハカセは「順番はさっきとは逆で始めましょう。」そう言いカードを配り終える。
カシウスが「普通は、ダイヤの3を持ってるヤツからだろ?」と言われハカセがOKすると、フィオナが「じゃあ、私からだわ。」とダイヤの3を出し始める。
順番はフィオナ→カシウス→メラ→ハカセである。ゲーム無難に進んで行き、ハカセが8切りをして7の革命を起こし、3を出したところ、フィオナにジョーカーを出され流され、フィオナが9を出す。
カシウスが8を出して8切りをする。そして、また革命を起こした。
メラは「ハカセ革命、三日天下の巻」とゲラゲラ笑っていた。カシウスが「笑いのツボおかしくないか!?」とツッこみを入れる。
ハカセが大富豪、カシウスが富豪、フィオナが貧民、メラが大貧民になった。ハカセは「僕の革命を笑ったからこうなるのです。」と言っていた。
カシウスが、「まだ時間あるし卓球しに行こうぜ。普通は風呂上がりにやるのが良いんだけどな。」と言い、一行は卓球をしに向かった。

四足歩行で卓球が出来ないメラを審判とし、さあやろうか、となった所で、フィオナが「卓球ってどうやってやるの?」と、首を傾げたので、急遽カシウスとハカセでチュートリアルが始まった。「フィオナさん、こういう風にラケットを持って、ボールを相手に向かって弾き返してください。」と、フィオナはハカセに倣って、ぎこちなくラケットを握ると、カシウスの隣に立った。「ハカセ、少しラリーしてスマッシュ頼むなー。」「分かりました。」と、カシウスとハカセのラリーが始まった。カッ、カッ、と、ピンポン球の小気味よい音が数回続いた後、スカンッ!と、ハカセのスマッシュ。これを数回続けると、フィオナが「分かったわ。」と、ラケットを振った。最初の勝負はハカセ対フィオナ。メラの「手加減してあげてくださいよ。」の声を、はいはいとあしらうハカセと、初めての卓球にワクワクしているフィオナの卓球対決が始まった。最初は空振りを続けたフィオナ。ラリーにもならず、三点連続奪取したハカセ。しかし、フィオナが慣れてくると、試合に変化が起きた。たまたまではあるが、フィオナがスマッシュを決めた。フィオナ自身の怪力と、ぎこちない動きが、偶然にもマッチし、スマッシュとなったのだ。これがずっと続き、フィオナが勝利を収めた。もちろんハカセの手加減も勝利の原因の一つだろうが、連続スマッシュに、卓球場の人々の注目を集めたフィオナであった。2回戦、ハカセ対カシウス。互いに同じ程度の実力だったために、勝負は長引いたが、ギリギリで勝利したのはカシウスであった。そして最終戦、カシウス対フィオナ。「注目の戦い」と、ハカセやメラのみならず、他のギャラリーを集めての対決。フィオナの連続スマッシュと、こっそりと靄で対応するカシウス。激しいラリーが続いたころ、フィオナが決めのスマッシュを打とうとしたところ、強い力を加えられ続けたピンポン球がとうとう割れてしまった。よって、最後の戦いは引き分けで終わったのであった。

「い…いやあ、負けましたね。今度はテニスでリベンジしましょう。」そう言い、ハカセは夕飯を食べに料亭へ向かった。
カシウスが「そういえば、ハカセってテニスが得意だったよな。どんな戦い方をするんだ?」と聞くと「僕はオールラウンダーで、軒並み何でも出来ます。さらに、両利きですので左手でも〜」とマニアックな話をしだしたので
メラが慌てて「そんな話してもカシウスさんとフィオナさんはわかりませんよ。」と言う。カシウスが「いや、いいんだ。ハカセがテニスが好きだということや、強いことは伝わったし、喋ってる時幸せそうだったしな。」とメラに諭す。
そんなこんなでハカセがテニスへの意気込みを語っていると料亭へ着いた。

ハカセ達が4人のテーブルに座ると、和風な土地柄に住んでるハカセですらあまり食べたことの無い和風な料理が運ばれて来る。
ハカセは「と…とてもおいしいです…」と頬張る。頬張るたびに感動のあまり涙が零れる。
それを見ていた食器を片付けに来た料亭の女将さんが「あらあら、お嬢ちゃん、そんな泣くほど美味しいかい?」とハカセに聞くと「は…はい…とても美味しいです。」と震えながら語った。
女将さんが「はっはっは、お嬢ちゃん、上手いねぇ。そっちのお兄ちゃんは彼氏かい?それともお兄ちゃんかい?」とカシウスを見やる。
カシウスは「あっ、いや…両方とも違うぞ。それとその子は男だ。」とハカセの方に目を向ける。
女将さんは「あれまあ…気付かなかったわぁ…本当に男なのかい?」とハカセに聞くと無言で頷く。
女将さんが「それで、あんた達はどういう関係なのよ〜、友達かい?」と聞くと「ええ、僕はカシウスさんのこと友達だと思ってます…が…」意味深げにフィオナをチラっと見つめる。カシウスが「ああ、俺もハカセのこと友達だと思ってるぞ。」
ハカセが「この旅行の企画者は本当はフィオナさんなのです。僕達を誘っていただいて…」とジュナイパーの方へ見やると
女将さんが「ほう、ジュナイパーのお嬢ちゃんが赤い髪の男のお嬢ちゃんを誘った訳かい?」と聞こうとすると
ハカセが「その、きっと何故誘ったのかは内緒なんだと思います…」と誤魔化そうとした。

フィオナは「券が余ると勿体ないでしょ。」と言い、そっぽを向いた。カシウスか「照れ隠しだな。」と呟くと、図星であるかのように身体を震わせ、「そんなんじゃない!」と、グラエナのように唸るフィオナ。そんな彼女を宥めるかのように、ドーン、と花火の音が聞こえてくる。「そう言えばこの時期は毎日花火をあげるんだよ。ジュナイパーのお嬢ちゃん、彼氏と見に行ったらどうだい?」と、女将さんが茶化すと、「あなたまで…。」と、ため息をつくフィオナ。ハカセが諦めずに、「女将さんも言っていますし、行きましょうよ。」とフィオナを誘う。そんな様子を見て、「若い子はいいねぇ!」と、豪快に笑う女将さんなのであった。