Dream of the mate's birth  作:ポケマニ(1175) 投稿日時:05/10/16


 ミナモシティのポケモンセンター前、バトル用の広場に黄金色の閃光が奔った。ドサリ、と言う音と共にきょうぼうポケモン、サメハダーは地に伏す。相手は普段なら相性が悪いはずのポケモン、フーディン。
 「うっし、これでそっちの六匹戦闘不能だね。私の勝ちっと。」
 バトルフィールドを覆っていたバリアが消え、フーディンを連れた一人の男が出てきた。髪はボサボサ、紺色のトレーナーと黒のズボンをはいているトレーナーだ。
 「お疲れ、デルタ。今日もありがとうな。」
 男はそう言ってフーディンをボールに戻し、ポケモンセンターの扉をくぐった。彼は全てのボールを係員に預け、ロビーに設置してあるソファに腰かけた。今日のミナモの空は良い天気。窓から差し込む暖かな日差しが眠気を誘う。そう言えば、もう10年も経つのか・・・。眠りに落ちていく意識の中で、彼はパートナーとの出会いを思い出していた。

 「まだ、生まれないのかな。」
 少年は呟いた。10才の誕生日に貰ったポケモンの卵を見つめながら。全体が黄色で、両手で抱えることができそうな卵。どんなポケモンの卵なのかは分からない。両親に聞いても教えてくれなかったからだ。卵はなかなか孵らなかった。寒く、冬は雪が降る地方だったためだろうか。一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月。少年は卵が孵るのをじっと待っていた。しかし、毎日そばに居ても卵はピクリとも動かなかった。中のポケモンが死んでしまったのではないかと近くのポケモンセンターに診せに行った事もあった。だが、ポケモンセンターのジョーイさんも「生きてはいるけど原因は分からない」としか答えてくれなかった。
 まわりの友達のほとんどは親から貰ったポケモンやモンスターボールで捕まえたポケモン等を使い、すでに旅に出ていた。それでも少年は親から貰った卵の他にポケモンを捕まえようとはしなかった。他のポケモンを捕まえてしまったら、タマゴをくれた両親や、生まれてくるポケモンを裏切る事になる。少年はそう考えていたのだ。そして、少年は勉強した。卵が孵ってすぐに旅に出る事ができるように。

 卵を貰ってから丁度一年経ったある日。少年は卵を抱えながら夕暮れ時の川原を散歩していた。途中で一時帰省してきた同い年の少年達とすれ違っても、彼らが自分を変な目で見ても少年は何も言わなかった。
 「一年・・・か。お前を貰ってから、もうそんなに経っちゃったのか・・・。」
 次第に日は暮れ、辺りが暗くなってくる。既に町から遠く離れてしまった。流石にもう家に帰った方が良いだろうと思い、来た道を引き返そうとした。っと、背後の茂みがガサガサと音をたてる。
 「っわ!?」
 少年が驚いて振り向いた瞬間、茂みから黒い影が飛び出した!よく見るとそれはくらやみポケモン、ヤミカラス。少年は後ずさって逃げようとしたが慌てたためかよろけて卵を腕から落としてしまう。
 「あ!?」
 落ちた卵にピシリと言う音と共にひびが入る。ヤミカラスはこれ幸いとばかりに卵に狙いを定め、飛びかかった。少年はそれに気付き、必死で卵に覆いかぶさる!
 「・・・っ痛!」
 ブツッと言う何かが切れる音と共に少年に痛みが走る。ヤミカラスの「つつく」が背中をかすめたのだ。っと、その時覆いかぶさった卵が突然激しく脈動し、光を放ち始めた!
 「え!?」
 少年が驚いて起き上がると卵から天に向かって光の柱が立ち昇った!光が収まった後に残されたのは一体のポケモン。小さく、黄色い体を持つねんりきポケモン。少年は思わずそのポケモンの種族名を呟いた。
 「ケーシィ・・・。」
 だが、ヤミカラスはまったく動じずにケーシィに襲い掛かった。きっとポケモンとしての本能が有利と告げているのだろう。少年はそう思った。そして、叫ぶ。
 「逃げろ!ケーシィー!」
 だが、生まれたばかりのケーシィは少年の叫びとは逆にヤミカラスに突っ込んでいく!その手から閃光を発して。交差する影と影。倒れたのは・・・ヤミカラスだった。呆然としている少年の下にケーシィが念力で浮かびながら寄ってきた。少年はそっと最初のポケモンに触れて、言った。ありがとう、と。

 「・・・ん。夢・・・か。」
 男は目を覚ました。どうやらしばらく眠っていたようだ。
 『ポケマニ様、回復が終了しました。カウンターにポケモンを取りに来てください。』
 寝起きでぼんやりしていた頭に回復終了のアナウンスが聞こえてきた。軽く欠伸をしつつ預けた6つのモンスターボールを受け取ると彼、ポケマニはミナモのポケモンセンターを出る。
 「さて・・・また向こうに顔出してこようかな。行くよ。デルタ!」
 今ではフーディンとなった一番の相棒のボールを手に取り、ポケマニは最近行き始めたカフェに行くためにミナモシティを後にした。