紅の冒険記  作:紅 投稿日時:05/11/13


紅の冒険記。



今までずーっと信頼してきた飼い主に捨てられた。
そのときは幼かったし、はしゃいでたけど、
一緒にいた藍はどっか行っちゃって。
ご主人は迎えに来ないから。
だんだん分かってきた。

『私は捨てられた』

(とりあえずどこかへ行こう。おなかすいたし。)
最初に考えたこと。ご飯を食べること。
私は適当に歩いた。
よく見たらココは何度か来た事のある商店街だった。
帰る道は分からないけど、
たしかレストランのおかみさんが「おやつ」をくれたっけ。

「お、紅ちゃんじゃないの。今日は一人かい?」
やっぱりおかみさんだ。沢山の食べ物と、カバンをくれた。
―――今思うと、この時おかみさんは全て分かったのかもしれない。
さて、ずっとココにいてもしょうがないもんね。
私は南へ歩いた。
寒いとこは苦手だから。

おかしいな。ぜんぜん暑くなんない。
「・・てゆうか、風が吹いてきて・・・」
そう呟いた瞬間。私は何か冷たいものに落下した。
息が出来ない!!冷たい!!・・水?しょっぱい!?)
炎タイプの私には水は天敵だ。
レベルの低い私の体力はドンドン失われていく。
犬掻きで必死に水面に出ようとしても、やっぱり浮くことが出来ない。
(苦しい!・・もう・・だめ・・)
私は何をしているのかもわかんなくなった。
『瀕死』状態になったんだと思う。
かすかな意識の中で、何かにつかまれて、引っ張られて、
温かい何かに包まれた。



「くぁ・・・?」
目が冷めるとどこかの砂浜に打ち上げられていた。
(じゃぁ、何に引っ張られたんだろう。)
ふと見ると、小さな足跡と、『おうごんのみ』。
「・・・藍だ。」
藍は、良く私に黄金のみをくれたっけ。
私はそれをバックにつめて、砂浜を出た。
また海に来ておぼれるのはイヤだったから。

ところが運の悪いことに、私はまたおぼれたのだ。
今度は小さな沼。
自力で出てきて、毛づくろいをしてたら、変な人に拾われた。
「・・・ブースターが、何で沼になんか落ちてんだよ」
その人はぼそっと呟くと、タオルをくれた。
(優しい人もいっぱいいるんだね)

またある日は、悪ガキにゲットされそうになった。
「わっ!ブースターだ!!野生のブースターだ!!
ほしい!!ほしい!!」
何十回ボールを投げられただろう。全部を交わして、
草むらに逃げ込んだ。
そしたら運悪く、そこにはスピアーが眠っていて・・・
「うわぁぁぁ!!?ごめん!わざとじゃない・・いったぁ!!」
スピアーの群れに追い掛け回されて、
毒針などの技を食らった。
全部まいたときには毒状態。
「〜〜〜藍ぃ〜・・・」
半泣きになったとき、やっと気がついた。
もう、ご主人も藍もいない。私は
誰にも頼っちゃいけない!!
にわかに元気が出て、また歩き出した。
とちゅうでモモンのみやオレンのみを見つけて
回復したりもした。
優しい人にも、沢山あった。


いつのまにか、変な森に迷い込んだ。
ゴーストやサマヨールに襲われて体力がなくなりかけた頃、
明るいとこについた。

その記憶ははっきりしてる。
いろんな人が、楽しそうに笑ってる。
――私も、笑いあったりしたいな・・

そう思って、戸を押した記憶が残ってるんだ。

あれから数ヶ月。
藍は、たまに僕の前に現れて、何か言ってくれたりした。
でも話すことはあまりない。
『ご主人が好き』な私。『嫌い』な藍。
今も藍は、どっかをさまよってるんだろうな。

私?私はココが気に入ってるからもう冒険はしない・・・かもね。