「ポケモン村のお正月」  作:ガーリィ 投稿日時:06/1/4


語り:ホーン
 作:ガーリィ

「──ハッピーニューイヤーッ!」
 今まで静かだったファイア村が、その言葉を合図に突然騒がしくなった。──時刻は午前0時。
 ──そう、たった今、新たな年を迎えたんだ。
 広場には沢山のポケモンたちでごった返していて、勿論、僕ら三人もその中に居た。
 皆思い思いの飲み物を持って乾杯し合っていた。──ドンすけはちょっと面倒臭そうにキャプテン(ウィン)と乾杯してたけどね。
「──明けましておめでとうっ、ガーリィ!」
「うん、今年も宜しくっw」
 僕は得意の二本足立ちで右前足にグラスを持ってガーリィと乾杯した。もう、弾けんばかりの笑顔、でね^^。
「──ぷはーっw」 
 グイッと一気にオレンジジュースを飲み干した。──いつも飲んでるんだけど、今日のは何かちょっと違う。とっても清々しいんだ^^。
「おっ、良い飲みっぷりだねっw」
「うんっ、今年も良いコト有りそうっ^^;」
 そしたらキャプテンがやって来た。「──おっ、今年の初笑顔だな。…その調子でまた一年過ごそうな;」
「はいっ、勿論っ^^;」僕は喜んで頷いた。「──狙うは今年もポケカップ優勝──ですか?」
 するとキャプテンは意外な顔を見せた。「──お前からその言葉が出るようになったんだな。…良かったよ、カフェに行かせて。」
「──へへっ^^w」僕は思わず照れた。「──っと、あれ?ガーリィは?」
「さっきまで居たんだが…?もしかしたらカフェに新年の挨拶しに行ったのかもしれないな。」
「あっ、抜け駆けはズルいよっ;」そう言って行こうとしたらキャプテンに止められた。
「──まぁ待て。今頃あそこも混んでいるだろう。焦るコトは無いさ。」
「──…はーい;」
 …それにしてもいつ行ったんだろう?ガーリィのやるコトはいつも突発的で分からないや。
 そんなコトを考えているうちに、“ドーン”という音と共に、一発目の花火が上がった。
「──あっ、始まったんだ;」
 僕は広場の端の木の下に座って、夜空を見上げた。
 其処には夜空を彩る七色の花。次々と咲いては消え、僕らの目にその記憶を焼き付けていく。
 ほんの一瞬なんだけど、僕の心の奥の奥まで染み透っていくんだ。──楽しいコトも、哀しいコトも、全てを潤してくれる。
 
 ──僕の心の底には、哀しい記憶が詰まってる。今でもそのコトを思い出すと胸が苦しくなるんだ。
 辛い──負の気持ちが、時々僕のコトを押し流そうとしてる。その度に僕は耐え、克服しようとしてきた。
 けど、去年は何度かその気持ちに負けちゃったんだ。込み上げて来る怒りと哀しみ──決して消えるコトの無い、癒えるコトの無い傷に。
 だから今年こそ、それを完全に克服したいんだ。──その先にしか、明るい未来は待っていないと思うから。

「──おーい、ホーン!」
 遠くからドンすけの呼ぶ声がした。見ると、広場の真ん中で手を振っていた。
「──餅食い競争、始まるぞっ!早く来いよっ!」
 ──あっ、そっか;これから僕の今年最初の戦いがあるんだった。(ぇ
「うん、分かった!今行くよっw!」僕は慌てて走っていった。

「──ふぅっ、食った食ったーっw」
 新年会が終わった帰り、僕はお腹いっぱいだった。
「──結局何個食ったんだ?俺、途中から数えらんなくなっちまったぜ;」
「131個。…誰も追いつけないよ、ホーンの胃袋には;」ガーリィが苦笑した。
「美味しかったよっw…今年は全種類制覇しちゃった^^w」幸せ満面、僕は満足だった。
 ドンすけが思い出すように訊いてきた。「──そういえばよ、何で131個で止めたんだ?さっきのお前の勢いだったら、もう少し食ってたんじゃねぇのか?」
「あぁ、それね;──分かんなかったの?」
「…全然;」
 ちょっとガッカリしちゃった。ドンすけには分かって欲しかったんだけどなぁ…;
「──だって、僕の誕生日1月31日でしょ?」
「あっ、そっか;──道理でなぁ…;」ドンすけは苦笑した。…僕の誕生日ぐらい覚えておいて欲しかったんだけどね。
 そう話している間に僕たちは家の目の前まで来ていた。
「──じゃっ、6時ぐらいにまた起きるんでしょ?早く寝ないとっ;」
「初日の出見に行くんだもんね^^w」
「あぁ、忘れるトコロだった;──流石、必殺スケジュールマン;」ドンすけが笑って言った。
「当たり前でしょっ;」ガーリィはドンすけに向かって“ひのこ”を放ったけど軽くあしらわれてた。
「うん、じゃあ、また明日ねっ!」
 そう言って僕とガーリィは僕の家、ドンすけは自分の家に帰っていったんだ。

「──ったく、起きろっての!」
「──ダメだよドンすけ、こりゃ完全に爆睡してるよ;」
 ──時刻は午前6時。予定の時刻になったトコロなんだけど、疲れが溜まってたのか、僕は全然起きなかったんだって、後で聞いたんだ。
「一番行きたがってた癖に──肝心のホーンがこれじゃあな;」ドンすけは呆れてため息まで吐いた。
「…どうするの?このままじゃあ──」ガーリィが困り果てたように呟いた時だった。
「──待て、ちゃんと秘策は取ってある;…ガーリィ、キャプテンを呼んできてくれ;」
 ガーリィは不思議そうな顔をした。「えっ、キャプテン?」

「──ふあぁぁ……;」
 次に僕が起きた時、まだ空は暗かった。
「…おっ、やっと起きたか?」隣に居たのはキャプテンだった。
「あれっ、キャプテン──?」──どうしてキャプテンが居るんだろう。僕は自分ん家で寝ていたはずなのに…;
 僕は慌てて周りを見渡した。「──あれっ、いつの間に…;」其処はもう、ミーティン海の浜辺だったんだ。周りには村のポケモンたちがざわめいていた。
「──ったく、お前が起きねぇからキャプテン大変だったんだぜっ;」
「大変?」僕はキョトンとした。
「ほらっ、コレだよコレっ、コレにお前を乗っけてきたんだ;」ドンすけが指差したのは僕の乗っていたソリだった。──そっか、キャプテンが引っ張って来てくれたんだ…;
「…あっ、キャプテン、ゴメンなさいっ!」僕は慌ててソリから降りた。
「なんの、コレも訓練の一つだと思えば平気だろう。」キャプテンは笑ってそう言ってくれた。
「──っと;そろそろ日が昇るぜ;」
 僕らは一斉に水平線の向こうを見た。
 
「うわあぁ……。」
 赤めいていた東の空に顔を出した真っ赤な太陽の頭から光が漏れる。
 夜空に放たれたその、美しくて、神々しい光に僕らは見とれていた。
「──さあ、新年の祈願を!」キャプテンがそう言ったのを合図に、僕らは初日の出に向かって願い事をしたんだ。
 ──皆がどんな願い事をしたかは分からないよ。けど、僕はこう、思ったんだ。

『──今年もドンすけとガーリィと一緒に、楽しく過ごせますように;──そして今年こそ、過去の自分に打ち勝てますように;』


 ──ハッピーニューイヤーっ^^!今年も宜しくっ^^w!


 
 END