空白の1ヶ月  作:佐藤軍師 投稿日時:06/1/15


私は佐藤軍師。 今はある喫茶店の常連になってはいるが、昔はある程度は
知られたトレーナーだった。 まあ、私のような人でもリーグで負けるときは負ける。
それ以来自身の実力の限界を知ったよ……っと、そんな事はもうどうだっていいんだ。

今でこそ半引退状態の私ですが、ポケモンの管理はしっかりしているつもり……のはずだ。
だが、どうしても分からない事……そう、ハジツゲに1ヶ月行っていた頃に
行方が分からなくなっていた切苦とおそらくその時に生まれたのであろうツバキの事だ。

どうしても知っておきたい……空白の1ヶ月、何があったのか……。



ここはファーヴニルの身体の中にある空間の一つ、私はここを自分専用の部屋にしている。
めったな事では他の人は入れない(と言うか入ろうとしない)部屋に切苦を呼んで話を聞いた。
切苦「……で、私に何の用なの?」
軍師「……どうしても聞いておきたいんだ、あの1ヶ月の間に何があったのか。」
切苦「そう……でも聞いた後で殺されるとしたら?」
軍師「……その時はその時だ。 もっとも、本当に殺されたらの話だがな。」
切苦「ふふ……いい覚悟ね、それじゃあ話してあげるわよ……。」

そう、それは修行の初日だった。私は一人離れた場所で修行していた。
他の人も気づかないようなところで、他の人を気にする事もないようなほど……
それが自分の失敗だったわ。
切苦「ふう……今日はこのくらいでいいわね……でもどうしよう、戻るのはいいとしても……。」
(ガサリ)
切苦「!! 誰ッ!!」
そう言った直後に牙が襲い掛かってきていた。私も気づくのが一瞬遅れてしまったわ。
(カツン!!)
救いだったのは、その技が「どくどくのキバ」だったということ。傷一つ負うことはなかったけど
傷を負わなかった事の方が酷かったわ。相手は背後から私を締め上げ……私はそれで気を失ってしまった。

軍師「……ハブネーク、って言ってたな。」
切苦「そうよ……そしてそれが私と彼の出会いだった。」
軍師「……泣けてくるな、そういう出会いって。」
切苦「泣くのは構わないけど……後にしてくれない?」
軍師「おお、すまない。」


気が付いた時はどこかの巣穴だった。それと同時に何かを引きずってハブネークが入ってきたわ。
ハブネーク「……気が付いたか。」
切苦「気がついたも何も、あなたがやったんでしょ。」
ハブネーク「そうだったな……久しぶりの獲物だと思ったんだがな。」
切苦「……最低。」
ハブネーク「で、どうだ?食わないか?」
ふとハブネークの横を見るとぼろ布に集めれるだけの木の実が入っていた。
切苦「……でもどうして私に?」
ハブネーク「……知らねぇよ。だけどよ、ほっとけないんだよ……。」
切苦「……そう……。」

切苦「……その後、私はそこでしばらく……暮らしていたわ。」
軍師「ほう……木の実?」
切苦「……どうしたの?」
軍師「いや、修行期間中に木の実を植えて育てようとしたんだが……殆どがなくなっていたんだ。」
切苦「……そういえば軍師は辛い木の実を植えるわよね……あの時持ってきてくれた木の実も辛い木の実ばかり……。」
軍師「……やられた……。」
切苦「……で、ここで休憩にしない?」
軍師「だな、ちょっと休もうか。」

軍師「……で、あの後どうなったんだ?」
切苦「そうね……。」

そう、あれから15日くらいは一緒にいた、私としてはそろそろ別れようかと思っていた時だったのに……
どうしても別れられなくなっていた……
ハブネーク「……どうしても言いたい事があるんだ。」
切苦「……何よ?」
ハブネーク「俺と……こんな俺だけど……付き合ってくれないか!!」
切苦「……はい!? だって私は……」
ハブネーク「そんなのはどうでもいいんだ……ただお前の事が好きなんだ!」
切苦「……そう……じゃあ、もう隠す事もないわね……。」
別れられなくなっていた……告白された事もあるけどもう一つは……

軍師「ツバキちゃんを生んでいた、と言う事か。」
切苦「……そうよ……それで戻りたくても戻れなくなっていたの。」
軍師「……意外と家族思いなんだな……独り身だったのに。」
(只今軍師は自分の影にどつかれています、しばらくお待ちください)


それでもどうしても別れなければならない時が来た……そう、そろそろ修行期間が終わる時……
娘も任せれるようにまで成長したけど……
ハブネーク「どうしても行かないといけないと言うのか……。」
切苦「そう……私は元々トレーナーのポケモン。そろそろ戻らないと心配するし……。」
ハブネーク「だが……この子はどうするんだ。」
切苦「あなたに任せるわ……でも……どうしてもと言う時は、近くの霧が立ち込める場所に来て。」
ハブネーク「霧が立ち込める場所……。」
切苦「私のトレーナーはその先にいる……だから……。」
ハブネーク「そうか……。」
切苦「それと……名前……聞いてなかったね……。」
ハブネーク「そういえばな……俺は……。」

軍師「ちょっと待て……。」
切苦「……何よ?」
軍師「……もしかしてそのハブネーク、『梅澤』って名前か?」
切苦「……!! 何で知っているの!?」
軍師「いや、最近ある友人からハブネークを譲ってもらったんだが、切苦ちゃんを見たとき
   少し様子がおかしかったんで……。」
切苦「……最低!!」
軍師「ってちょっと待て!本気で殺しに来るな!!うわっ、なにをする!やめ……!!!」
そう、意外と家族って近くにいるものだったんだ……あべs