夢と昔と鐘と月  作:愁海棠 投稿日時:06/5/1


「ぐ……、!!!?」

汗まみれの体、また夢を見たのだと気づくのに数分を要する……

そして何事もなかったかのように汗を拭き、着替える。

あの日から見るようになった夢

…いつも見る夢は楽しく、必ず絶望に包まれる。

懐かしさと、後味の悪さはいい加減慣れた…が

あの絶望には慣れることはできない……



私はある教会に来ている、満月の晩にあることをするために……



4年前、私はそれまで犯し続けた罪に対して罰を受けた。

そのころの私は数人の仲間と…楽しく、命をかけながら旅をしていた。

そんな中旅の途中、立ち寄った町…そこにあった『永久の祝福を与える鐘』…

その正体を知らずに自らの情念をこめて…鐘を鳴らし…そばに居た大切な人を石に変えた……

石化が進み恐怖を抱きながら…仲間を信じるその人を…

皆で止めようと様々な術を試した…

思いの強さ…私の最も強い思いがこもった呪縛ともいえる、打ち砕けない念。

皆を信じ最後に微笑みで時を止めたひと……



今、教会に佇むその人の笑みは私に絶望と虚無を与え続けている

その後の旅で呪縛を砕く方法を見つけ、私は仲間たちと別れた。

『こめられた想いに見合った満月の光を石像に当てる、そして解呪の言葉を告げた時

祝福は終焉を迎えるであろう』

その言葉は心に刻み、元凶となった鐘は全力で砕いた。

教会を立て、その人を安置し、満月の晩、月光を増幅させ当てる。

いつ終わるかも分からない作業…私はいつしか……若さを失っていた……



「ぐ……、!!!?」

汗まみれの体、また夢を見たのだと気づくのに数分を要する……

そして何事もなかったかのように汗を拭き、着替える。

あの日から見るようになった夢

…いつも見る夢は楽しく、必ず絶望に包まれる。

懐かしさと、後味の悪さはいい加減慣れた…が

あの絶望には慣れることはできない……