―オモイデ―  作:アーチャー 投稿日時:06/8/22


広大な宇宙にある星のひとつ、地球。
その周りを航行する宇宙船の船長用食堂。
窓からは青く水に満ちた惑星、地球が見える。

楕円形のテーブルに乗せられた豪華な料理を前に、黒いマフラーをしたバクフーンがモジモジと立っている。
そのテーブルの席についていたキノガッサが、バクフーンに語りかけた。
「…遠慮の必要は無いぞ?トビ。」
「そうだぜ、早く座れよ。飯が冷めちまう。」
キノガッサの右隣りに座っていたピジョットも言う。
「ケセルダの言う事は正論です、上級士官の食事に同席するだけですよ?」
左隣りのデンリュウも。
トビ(バクフーン)は「そうかな…。」と言うと、キノガッサ達と同じ席についた。


「…アーチャー船長は、今までいくつの星を…探索したの?」
アーチャー(キノガッサ)達と食事を共にしながら、トビがたずねた。
「そうだなぁ……もういくつになるかな、アイ副司令官。」
「艦隊記録によると、未知の惑星を探索したのは地球を含めて約50以上です。」
「もうそんなにか!…俺もよく頑張ったんだなぁ。うるうる。」
「ケセルダ、貴方がまともに探索した星はアーチャー船長の半数以下です。」
「……。」
ケセルダ(ピジョット)はアイ(デンリュウ)を「このヤロー…!」と言わんばかりの目で見るが、アイは軽く流した。

「……そうだ、トビ…何か面白い話はないか?」
「面白い…話?」
アーチャーの問いに首をかしげる。
「あぁ。……なんでもいい、退屈しない奴を頼むよ?」
うーん、と考えるポーズをとる。
「そうだなぁ………今からちょうど、7年前くらいにあたるかな……」














現在から7年さかのぼった時点の別時空(いわゆるパラレルワールド)。
人間は数百年前に絶滅し、ポケモン達が生態系の中心となっていた。
ポケモン達は自然の中に住んでいるものの、科学技術は現代の人間と同レベル、いやそれ以上であった。

そんな時空の、とある森。
人間時代には『ウバメの森』と呼ばれていた、そんな森にある洞窟に、3匹のポケモンが住んでいた。
これはその3匹の物語。









「…カラスー。……ねぇーカラスってばー!」
朝の陽射しが差し込んでいる洞窟の中で、ヒノアラシが寝ているクチートを揺さぶる。
「っ……。」
カラスと呼ばれたクチートはまだ眠たいのか、寝返りを打ってヒノアラシに背を向けた。

「カラス起きたー?」
洞窟の奥から声が聞こえた。
一番奥にいるらしく、暗くて姿は見えない。
「うーん、まだー!」
ヒノアラシが応える。
クチートは相変わらず、スゥスゥと寝息をたてている。

「…ほらカラス、早く起きないと死ぬよ?」
「……。」
ヒノアラシが再び揺さぶるが、やはりカラスは起きる気配を見せない。
そこで、最後の手段とばかりにヒノアラシが背中の炎をカラスにあてた。
鋼タイプは炎タイプに弱いからすぐ起きるだろう、そう思う貴方はちょっと甘い。
「…っ……。」
「いたっ!;」
カラスはヒノアラシを蹴り飛ばした。

とそこへ、もう1匹のクチートが洞窟の奥から猛烈な勢いで走ってきて、ジャンプしながら寝ているクチートに突っ込んできた。
「フライングボディーアターック!w」
「ぐはっΣ!?…くっ!」
流石に効いたのか飛び起きて、突っ込んできたクチートを掴み、投げ飛ばした。

だがクチートは華麗に着地し、カラスに向けてニコニコ顔を見せた。
「コサギッ…も、もう少し手加減してくれ……;」
腹部を押さえながらヨロヨロと歩くカラス。
コサギと呼ばれたクチートは、気にする様子もなく頷き、洞窟の外へ出て行った。
「…カラス、行くよ?」
「先に行け、トビ…俺も後で行く;」
「うん…じゃ、お先に!」
軽くカラスを心配した様子を見せながら外へ出るトビという名のヒノアラシ。
「………。」
カラスはトビを見送ると、ゆっくり倒れた。








カラスが眠たそうな目で洞窟から出てくると、2匹の姿はそこには見当たらなかった。
「…コサギ?トビ?」
辺りを見回しても2匹は見えなくて、ポッポの鳴き声だけが聞こえてくる。
「……木の実探しにでも行ったか。」
そう呟くと、近くの木の根元の葉っぱを掻き分け、隠してあった木の実を手に取る。
「…まだここは見つかってなかったな。」
どうやら2匹には内緒で隠していたようだ。
軽く目をこすり、近くの切り株に腰掛けて空を見上げる。

「……風が………ないている……。」
木の実をかじりながら、少し険しい表情で空を見つめる。
雲はゆっくり流れ、ポッポ達は鳴きやみ、今は木のざわめきだけが聞こえてくる。
そんな環境が、カラスは好きだった。





ふと気が付くと、カラスは草の上に座っていた。
「……なに…?」
突然の事でよく分からないのか、左右を見る。
カラスの数メートル横には、さっき座っていた切り株があった。
あれ、と思いながら自分の座っていた位置(真下)を見ると、そこには元から何も無かったように草が生えていた。

「………まだ寝ぼけてるのか、俺は。」
軽く苦笑し、よっこらせと立ち上がる。
「…あの2人、遅いな……。」
再び空を見上げる。
座っていた時と見上げた方角は変わらないのに、雲が逆に流れている。
「……風向きが変わったか?…それにしても、早いな……。」
少し疑問に思い、数秒考えてみたが、すぐに考えるのをやめた。
「………迎えに行くか。」
何か不安に思ったのか、トビ達を探しにカラスは歩き出した。









「…興味深い現象だなぁ、原因は?」
アーチャーが好奇心たっぷりな目でトビを見た。
「うぅん……時空が揺らいでいたんじゃないかなぁ。僕らの世界は元々この世界のように安定していなかったし。」
「??……まぁーた俺には難しい話かよー;」
「貴方本当に艦隊の学校を卒業したんですか。」
「したからココに居るんだろー?」
「まぁまぁ…トビの話の続きを聞こうじゃないか。」
言い合いが始まると予感したのか、アーチャーが2人の会話を遮った。










その頃トビ達は、森の中でヨーギラスとデルビルに襲われていた。

「おいおいぃ、この辺は俺様たちの領域だぜぇ?分ぁってんのかこの野朗!」
既に全身血まみれで倒れているトビが、ヨーギラスに腹部を蹴られる。
「う…くっ……」
守る気力も無いのか、蹴られてもほとんど動かない。

「冷凍ビーム!」
コサギの放つ冷凍ビームがヨーギラスを狙うが、デルビルが火炎放射を放って相殺した。
「お嬢ちゃんよ、ヨーギラスの兄貴に逆らわんといた方が身のためだぜぃ?クク…。」
軽く炎を吐き、威嚇している。
「うるさいこの不良!」
それに怯むことなく、コサギは大きく飛び上がってデルビルに飛び蹴りをいれようとした。
が、蹴りを入れる前にデルビルが火炎放射を放ち、コサギを吹っ飛ばした。

「おいおい、その辺にしとけよ?クズいじめが楽しいのは分かるけどよぉ。」
ヨーギラスが笑いながら言う。
「でーもよ、俺さっきこのクチートにやられた傷が痛むんだよ。どーにかしたいんだけどなぁ?」
「へっ、ならもう一発入れてやれ。」
デルビルはニィッと笑うと倒れているコサギに近づき、火炎放射を放つために口に炎をため始めた。

「死ね!!」
カラスが枝から飛び降り、ドゴォ!とデルビルに飛び蹴りを喰らわせた。
「がゥッ!;」
大きく吹っ飛び、倒れるデルビル。
殺気に満ちた目をして立っているカラスを、ヨーギラスは驚愕の表情で見た。
「っ……またテメーか!この前俺様に手を出して、俺様の親父に半殺しにされたのをもう忘れたのか!」
「忘れはしない……。」
すっと構えるカラス。
「チッ……邪魔なんだよ!消えろ!」
砂嵐をカラスに向けて勢いよく放つヨーギラス。
カラスはやむなく両腕で目を守るが、ヨーギラスの破壊光線が直撃した。

「がはっ……!!」
大きく吹き飛び、木に激突する。
膝をつき、特に痛む左腕を右手で押さえながらヨーギラスを睨みつける。
「…けっ、まーだそんな反抗的な目をしやがる…。」
勝ち誇った目でカラスを見下すヨーギラス。
カラスから離れ、デルビルに近づく。
「おい起きろ。んなとこで寝てんじゃねーよ。」
「ま…まだ痛くて……起きれねぇスよ……;」
横になったまま動こうとしないデルビル。
「なっさけねぇ…それでもテメーは俺様の弟分かよ。」
「も、も少し待ってください、兄貴;」
溜息をつくヨーギラス。

「ふん……蹴り…一発で倒れる…ザ、コが貴様の…弟分とは、笑わせる……」
よろめきながら、残った力を振り絞って立ち上がるカラス。
ヨーギラスはそれを見ると、再び破壊光線を放つ体勢に入った。
「…しぶてぇなぁしぶてぇなぁ、うざってぇから沈んでろ!」
カラスに向けてヨーギラスが破壊光線を放つ!
「おおぉぉおおお!!」
カラスはあえて破壊光線に立ち向かい、メガトンパンチを繰り出した。
メガトンパンチで発生した衝撃波が破壊光線を打ち破り、
驚愕の表情を浮かべるヨーギラスに、もう片方の手でメガトンパンチを繰り出した。








「…ごめんね…カラス、コサギ……。」
夜。
ロウソクの灯が輝いている洞窟の中で、数箇所に包帯を巻いているトビが呟いた。
「…謝る事は無い、あのクズどもが悪いんだ。」
カラスがモモンの実を口に含んだまま応えた。
コサギも後に続く。
「そーそー!それにトビ君、最初私の事守ってくれたし、ね?」
「……そうかな……でも、守れなかったし…;」
うなだれ、目に涙を浮かべる。

「……俺が、守ってやる。…お前は元々強くならなくていいんだ、トビ。」
外の星を見つめたまま喋るカラスを、トビが見つめる。
「…お前には優しさがある…それで充分だろ。それとも……俺のように強くても、冷酷になりたいか?」
「……。」
カラスの顔を見つめながら、強さについて考えるトビ。

「ま、自分で自分を冷酷だーなんて言われたら困るよねーw」
「コサギ、今何か言ったか?」
「なーんにも言ってないですわおにーさまw」
「くっ…お兄様はやめろ!」
少し赤い顔をしながら、カラスがコサギに視線をうつす。
「じゃーおにいたまw」
「死ね!」
「きゃー怖い、それじゃあ…兄貴!」
「っ…それもちょっと……。」
「じゃー…お兄ちゃん!これで決まり!」
「待てコサギ!おにいたま並みに嫌だぞソレは!」
「もう決定事項だもんねーw」
「決定するな、訂正しろ今すぐに!」
「やーだよーw」
飛び掛かってくるカラスをひらりと避け、辺りを逃げ回るコサギ。
そんな状況を、トビが微笑みながら見つめていた。










真夜中の洞窟。
コサギとトビが寝静まった頃。
「……。」
横になり、天井を見つめたまま、カラスが思い出にひたっていた。

トビと初めて出会った頃のこと。
コサギが作った初めての料理で生死の境を彷徨ったこと。
母親に毎晩『アルトマーレの昔話』という本を読んでもらったこと。
初めての喧嘩(ポケモンバトル)で負け、悔し涙を流したこと、そして二度と負けたくないと誓ったこと。
5年前に両親を亡くしてから3匹で暮らしてきた日々………。

その他たくさんの思い出を胸に、決意を込めた目で静かに立ち上がった。
そしてゆっくりと、トビとコサギを起こさないように外へ出た。








「ちょっと待て、何でトビにカラスの考えてる事が分かるんだよΣ!」
「カラスから聞いたんだよ。」
「あ、そう……。」
頷くケセルダ。
「本人から聞く以外に知る術は無いだろう?」
アーチャーが苦笑しながらケセルダを見た。
「……話の…続きを聞かせてください。」
「……。」「……。」
アイのこの発言に、アーチャーとケセルダは顔を見合わせた。











森を出た道を進んだ先にある広大な草原に、カラスの姿はあった。
辺りは暗くて数センチ先も見えず、昼間はあんなに晴れていた空は雲で覆われていた。
「……約束通り、来たぞ。」
警戒した構えを取りながら、カラスが呼びかける。
風が吹き、空がゴロゴロと鳴り出す。

「…誰かのテレパシーを使ったか知らんが…呼んだだろう?」
再び呼びかける。
応答のかわりに、ピシャア!という雷の音が聞こえてきた。
一瞬明るくなったとき、カラスの前方数メートル先に大きな影が見えた。
「……怖気づいて来ないと思っていた。」
地を這うような太い声が、辺りに響く。
「…俺が、何を恐れると。」

また空が、ゴロゴロと音を鳴らす。
風も次第に強くなり、雨も降ってきた。
「何を?……半殺しにされる事は恐れの対象にならぬか。」
今度は耳を劈くような音と共に、カラス達の近くの木に落雷した。
木が燃え上がり、辺りが少しだけ明るくなった。

カラスと対峙して立っていたのは、バンギラスだった。

「いい大人が、子供をぶちのめして何が楽しい。」
「子を傷つける奴を排除するのは、親心だと思えんか。」
「………過保護。」
その言葉に反応するかのように、バンギラスが大声で唸る。
カラスは戦闘態勢をとり、バンギラスを睨みつけた。
戦闘開始を告げるかのように、雷の爆音が辺りに轟いた。






「散れぃ!!」
バンギラスが思いっきり地面を踏みつけ、辺りを揺らがす。
カラスはすかさず飛び上がり、バンギラスにメガトンパンチを繰り出した!
「この前のリベンジ戦だ、今度こそトビやコサギに手を出させんようにしてくれる!」
「フン、ザコが!」
バンギラスも気合いパンチでカウンターを試みる。
互いのパンチがぶつかり合い、その衝撃波で2匹とも吹き飛んだ。

「ぬぅぅ!」
「くっ…!」
2匹がズザザッと着地し、互いを睨み合う。
「あぁうざってぇ、クチートってのは皆そうだ!貴様の親父もなぁ!」
ヨーギラスの破壊光線とは比べ物にならないほどの凄まじい破壊光線が、カラスに向かって放たれる。
「息子も同じ手を使ってたぞ?」
ヨーギラス戦と同じように破壊光線にメガトンパンチをぶつけるカラス。
だが破壊光線の威力が数段上だったらしく、メガトンパンチの威力が消えて直撃した。

「がァッ…!;」
倒れ、軽く血を吐く。
倒れているカラスに、ゆっくりバンギラスが近づく。
「…ケンカ売る相手を間違えたな、ガキ。」
「うぐっ……今のはわざとだ、見てるか知らんがあのヨーギラスに良いとこ見せたいだろう?」
フラフラと立ち上がり、バンギラスを睨みつける。
「…じゃあ本番と行こうじゃねぇの!!」
バンギラスが気合いパンチを繰り出すために大きく右腕を振りかぶったその時。


「ちょぉーっと待ったぁー!!」
威勢の良い声とともに、コサギが空から降ってきてバンギラスの頭にメガトンパンチをぶち込んだ。
怯んで頭を抑えるバンギラスに、今度はトビがカラスの前に走ってきて、バンギラスに火炎放射を放つ。
「ぐおぉぉおッ!;」
さすがにこれは効いたのか、バンギラスが膝をついた。
「コサギ…トビ…!?」
カラスが驚いた表情でトビを見つめる。
「…君が出ていったから、ついていった。…これ以上に説明いる?」
トビが微笑みながら振り向く。
カラスは、ピースサインをしているコサギを見ながら言った。
「……いいや…ありがとう。」
「どういたしまして。」

「……ナメていた…クソガキがもう2匹来ていたとは、気付かなかった…。」
バンギラスが、全身から黒いオーラを出しながら立ち上がる。
「…3対1だ、たとえ貴様が強くとも…勝てん!」
「そーだそーだ、諦めてお家に帰りなさーい!」
「僕だって…役に立てるんだ!」
3匹とも構えてバンギラスを見る。
バンギラスのオーラは膨れ上がり、天気も台風の如く荒れている。
「…俺様と…貴様らが同等?……上等だ、捻り潰してくれるわぁぁ!!」
バンギラスが大きな唸り声をあげる。
「覚悟しろ、目覚めるパワー!」
「ひっさぁーつ、冷凍ビーム!」
「いくよ、火炎放射!」
3匹それぞれの攻撃が放たれ、バンギラスに向かっていく。

「………ダーク…ストーム!!」






闇色の風が舞う雨の中。
明かりの元である燃える木も、少しずつ消えつつあった。
夜明けが近いのか、地平線が明るくなってきている。
相手を目で確認できるほどの明るさになった草原には、クチート2匹とヒノアラシが傷だらけで倒れ、バンギラスが立っていた。
「……ククク、もう死んだか…?」
バンギラスがカラスの側にいき、顔を踏みつける。
「がっ……ぅ…」
トビは必死で顔をあげ、苦しむカラスの姿を見つめた。
「……カラ…ス……」
トビは非力な自分を恨んだ。
恨んで恨んで恨みぬき、そして…光に包まれた。


「わあぁぁあ!!」
マグマラシが驚くバンギラスに飛びつき、零距離で火炎放射を放った。
「ぐあァッ…!…貴様ァ、消え失せろぉぉ!!」
バンギラスはトビを掴んで引き離し、至近距離でダークストームをぶつけた。
「あぁァッ…まだまだぁぁ!!」
トビは吹き飛んだがうまく着地し、バンギラスに火炎車で突進した。
バンギラスは直撃し、吹っ飛んでカラスの上から離れた。
「ハァ、ハァ……バンギラスー!!」
「ぐぅっ……このガキィー!!」
バンギラスはトビに向け、最大の破壊光線を放った。
トビは避けるどころか破壊光線に突っ込み、再び光に包まれた。
光が収まったそこには、バクフーンが立っていた。

「バカな……このガキ、短時間で最終進化まで……!」
驚くバンギラスをよそに、トビは自らの周りに炎を集約させた。
「くっ……遺伝子改造を施されたこの俺様に、かなう奴など居はしない!くらえぇ、ダァークブラストォー!!」
凄まじい風に包まれた光線が、トビに向かっていく。
トビは右手を光線に向けた。

「………ブラストバーン!!!」












「……バクフーンがブラストバーンを使えたとは、驚きだなぁ?」
テーブルの料理を食べながら、アーチャーが言った。
「…おそらく、不安定だった時空がトビの身体に影響を与えたのでしょう。急激な進化もそれが原因かと。」
アイの推理が的中だったのか、トビが軽く頷いた。
「XDでブラストバーン使えるヒノアラシが居るらしいぜ?」
「ケセルダ。」
食べながら軽く突っ込むアーチャー。

「でもよ、遺伝子改造を施されたのはバンギラスで…お前ら3匹とも受けたハズだろ?」
「だからねぇ、話をしたんだよ。」
トビが微笑む。
ケセルダはハッとした表情になった。
「やられた……アーチャー、アイ、こいつ空想話しやがった!」
アーチャーは苦笑し、トビを見た。
「…本当に、その話が全部…嘘なのか?確かに、何か話をしてくれとは言ったが…」
トビはアーチャーを見つめ、微笑んだ。

「さてと……そろそろ部屋に戻ってもいい?いっぱい食べれたし。」
「あぁ、構わんとも。面白い話をありがとう。」
「うん…ご馳走様でした。」
ナイフとフォークを置き、両手を合わせて立ち上がる。
ドアの横のボタンを押してドアを開け、外に出ようとするトビをアーチャーが呼び止めた。

「今度、その話の続きを聞けるといいなぁ?」
トビは振り向き、微笑みながら言った。
「……ご命令を、船長さん。」
トビはそのまま食堂を出て、通路を歩いていった。

アーチャーはトビを見送ると、窓の外の地球を眺め、再び食事に戻った。