〜ゼンシン〜  作:楽羅 投稿日時:07/3/4


ボクは、もう誰も信じられない…

ボクを、誰も信用してくれない…

そんな日々を送っていた、ボクが産まれて1ヶ月の冬。

「へっ、何こいつきったねー。」
「何よこの野良猫、近寄らないで!」

ボクは3人兄弟で、そう言われ続けてきた。
ボク達がうまれてすぐ、お母さんとお父さんは車に跳ねられてしまった。

そしてお兄ちゃんも、病気で死んでしまった。
結局、ボク達2匹だけで生きていくことになった。

……モウイヤ。コンナ街…デテイキタイ…


そしてボクは、何も考えれなくなった。
生きている理由がわからなくなった。

だから、ご飯を食べない。
…食べれなくなってしまったの。

「咲、……どうしたの…?」

細い声で言った。

「………………。」

ボクは何も言えない。

「…咲…ねえ、ご飯…食べよ?…頑張って…お母さんたちの分まで…生きよう?」

……生きたい。…でも…苦しい。
ボクは、フクザツな気持ちになって
ついに泣き出した。

「…ううっ……」

「………咲……。」

「…っ…………」

「…咲……?」

「……お姉ちゃん…」

ボクがどこかへ行っちゃえば、お姉ちゃんはボクに気を遣わなくていい。
…食べる物も、みんなお姉ちゃんが食べて…
お姉ちゃんは…生きていける。

「さようなら……お姉ちゃん。」

もう、顔を合わせれない。
一人で生きていくしかないんだ。
苦しい…
寂しい…
でも、ボクはお姉ちゃんに背を向けて、歩き出した。

「咲?…ちょっと…何処に行くの……?待って…!」

…振り返りたい、…振り返れない。
お姉ちゃんに抱きつきたい。
でもボクは決めたんだ。
お姉ちゃんの為にも、ボクだけで行きていくって…!

「待って!」

……。
ボクは立ち止まった。

「…咲…」

お姉ちゃんが抱き締めてくれた。

「一緒に…生きよう…。…今までも…一緒に生きてきたじゃない…」

「…うん…生きたい……一緒に…生きたい…!」

泣きながら、頷いた。

…ボクはなんてバカなことを考えていたんだ。
お姉ちゃんが生きられたって…
寂しい思いをさせるだけじゃないか……
お姉ちゃんを一人にしてしまうだけじゃないか…

ボクは…バカだった。
ごめんね…お姉ちゃん。





「ちょっと、咲?どうしたの、涙なんか流して…」

優しい声。

「ん?ううん…なんでもないの!w」

お姉ちゃんは別に人に引き取られた。
でも、寂しくなんてないの。
会いたいと思えばいつでも会えるし…
それに、ボクには大好きなご主人様達がいるんだもん!

「…ホント?大丈夫?」

「うん!へーきだよっ!早くご飯買いに行くの〜っw」

「あ、違う咲!道こっちだよ!…おーい!!;」

天国のお父さん、お母さん…お兄ちゃん。
ボクは元気です。
そして…とても、幸せです。
優しい人達に囲まれて…
あったかくて、楽しいです。
ボクは、そんな人達を失いたくありません。
…だから、ボクは前に進みます。

もう、迷いません。

…前進します。