激戦!バトルショーテント!  作:うみちゃ 投稿日時:10/11/24


『強いぃぃぃ!遥か南!カントー地方からやってきたイエロー選手!
勝利点も芸術点もほぼ完璧ぃぃぃぃ!今日も鮮やかに勝利を収めたぁぁぁ!』
























ここは極北、アンタルヤ地方のバトルフロンティア。
地方とは名ばかりのこの巨大な国家に最近オープンしたこの施設は
他に娯楽らしい娯楽が少ないこの地方の人々の心を魅了した。

週末にはたくさんの親子連れや腕に覚えのあるトレーナーが集まり、
普段中々見ることが出来ない生のポケモンバトルを見てある者は感動し
ある者は驚き、またある者は「来年の今頃あの歓声を浴びる者は・・・」
と、闘志を燃やした・・・。


そしてこのバトルフロンティアの中でも一際人気なのはこのバトルショーテント。
「ショー」の名の如く。この施設では勝利だけでなくバトルの芸術点も問われる。

バトルに負けても勝負に勝つことがあり、またその逆もありうる。

そしてこの施設のブレーンとそのポケモン達こそ・・・・・
















サーカステントを模した施設の客席の真下にあるナレーション席。
その席に座るナレーターに一枚の紙がそそくさと施設のスタッフから渡される。


『おぉ〜っと!ここでみんなに朗報だぁ!』



バトルの興奮冷めやらずどよめきたつ客席。そのどよめきが少し静かになる。
そしてある者は目を輝かせ施設の巨大なオーロラビジョンを見つめ
あるポケモンは悲鳴をあげ歓喜した。


バトルショーテントにおいてのこの台詞が意味することはただ一つ。
そして意味を知りつつも観客達は期待し、すぐに静まった。


『連勝を続けたイエロー選手にショーテントプロデューサーが勝負を申し込んだぞぉぉぉ!』


ワァァァァァァァァ・・・・・・


観客席から放たれる完成はゴニョニョのものから一気にバクオングへと進化を遂げた。







『バトルは本日の午後の部、大取りにて!チケットはフロンティア入り口とショーテント入り口で販売!
3ヶ月ぶりのブレーンバトルを見逃すなぁ!』






所変わって舞台裏。


「で、今回のバトルだが。」

並ぶポケモン達。その前で足を組み左上をホッチキスで止めた紙を
片手で持ちながら赤毛の青年が話を続ける。




「出身はカントー地方。かの有名なポケモンリーグセキエイ大会の
チャンピオンシップリーグで好成績を収めている者らしい。」



「ふぅん。芸術点もいいらしいわねぇん。」
と、髪の毛にウェーブがかかった色気のあるルージュラが一言。

「あぁ、その中でもカメックスが中々強いらしい。」
と小柄なバクフーン


「ぜヒ、お手合わせしたいでスネ」
色違いのポリゴンZが機械的な声で話す。

「・・・・・・・」
そんなこと興味無い。とも取れる態度で毛づくろいをするドンカラス。


パチンッ

各々で話し始めたポケモンたちに静粛を求めて青年は手を鳴らす。

「まぁまぁ、とりあえず今回のメンバーを発表しようじゃないか。」


「とりあえずオレは確定なんだよな。ケージェー。」
とバクフーン。ケージェーと呼ばれた赤毛の青年は「あぁ、」と頷く。



「サルサばっかり毎回ずるいわぁん。ワタシ達は毎回出られるか出られないかハラハラしてるのにぃん」
と、ルージュラ。

「オレだって休みがほしぃんだよ。文句は施設の支配人に言ってくれ。」
サルサと呼ばれたバクフーンはぼそっと文句ったらしく言った。

「まぁまぁサルサもララバイもガマンしてくれ。あ、ララバイは今回出場な。」

「やったわぁん!急いでお色直ししてこなくちゃ♪」
先ほどの不満そうな顔はどこへやら。一気に表情が晴れ、
メイク用の鏡の前へ大量の化粧品を並べ始めた。

「そんでラストはウォルテ。今回クーラントは休んでいてくれ。」

「了解シましタ。」
「何ぃ!?私を休ませるとは勝利を放棄するということかね!」

それぞれが同時に全く違う声色で返事をした。

「お前は基本的に芸術点枠だろ。どうせすぐに頭打って失神するんだから出ても出なくてもかわんねぇだろ。」
ニヤニヤしながらサルサが一言

「そんなこと無い!なぁ!ウォルテ!」

「クーラントさまノ戦闘生存率22、1%デス」

「なんだってぇ!お前まで私を愚弄するのか!なんという屈辱!あぁ・・・頭が・・・」

「はいはい、試合前に怪我すんじゃねーぞ。」
ケージェーがその場をてきとうにまとめた。
























『さぁぁぁて!皆待ちに待った大一番!本日のメインイベントぉぉぉ!
約3ヶ月ぶりに公式戦でバトルフィールドに姿を現すはぁぁぁぁ!
人呼んでバトルアーティスト!ショーテントプロデューサーのケージェーだぁぁぁぁ!』

すさまじい歓声。響くバトルフロンティアのテーマソング。
原色そのままの色をふんだんにあしらったサイケデリックな衣装を身にまとい
颯爽とバトルフィールドへ足を踏み入れるケージェー。


『そして対するはぁぁ!流星の如くこのフロンティアへ現れ次々と猛者を打ち倒していった
カントー地方のマサラタウン出身!イエロー選手ぅぅぅぅ!』


赤と白を基調とした洋服を着たまだあどけない顔の少年が
カメックス、ライチュウ、リザードンを従えてバトルフィールドの逆側へと入場する。
そのポケモン達は歴戦の勇者といった貫禄は無いものの
若く生き生きとした闘志と、いままでに培った確かな自身が見て取れる。





「ふふふ、いつでもわくわくするじゃないか。」
ケージェーは不敵に笑った。
そして自分の背後へと三つ、モンスターボールを投げる。

光の中から登場するのは先ほど舞台裏で名前を呼ばれた三匹である。


そしてまたもや歓声が上がる。



『おぉぉぉっと!これはすさまじいメンバーだぞぉぉ!』


『‘怪力魔女’ララバイ! ‘機動砲台’ウォルテ! ‘陽炎’サルサの三匹だぁぁ!』


「ララバイ!オレだ!結婚してくれぇぇぇ!」
「ウォルテー!こっち向いてー!」
「サルサー!イケメンっ!」

観客席のポケモン達は叫ぶさけぶ。もはや何が何を言っているのかわからない。


「弱い雄は嫌いなのよぉん。ごめんあそばせぇん」
上機嫌で観客席に手を振るララバイ。
「各部位の最終チェックヲ始めまス・・・・・」
ピピピ・・・とあちこちの機能のチェックを始めるウォルテ。
「へへへ、派手にやってやるぜ!」
闘志を燃やすサルサ。




『さぁ!両者先鋒前へ!』

ナレーターの一言が発せられるとのっしのっしと相手方はリザードンが前へ出る。

「ブレーンとのバトルなんてわくわくすんぜ・・・・」
バサバサと翼を羽ばたかせ、口から火を吹いてやる気満々のリザードン。


「じゃあ行ってくるわぁん。三縦しちゃうわよぉん!」

優雅に手を振るとバトルフィールドへと向かうララバイ。






「相手は炎タイプだ!くれぐれも気をつけろよ!」
叫ぶサルサ。その声に背を向けたまま軽く手を振って返事をするララバイ。





『さぁて!両者先鋒が出揃った所で!』

オーロラビジョンに3と数が映し出される

『観客の皆さん!ご一緒に3!』

『2』

『1!』

『戦闘開始!』










リザードンはトレーナーのすばやい指示を聞き、低く飛び上がりララバイへと
低空飛行で近づいていく。

一方ララバイは妖艶にゆっくりとまるでカンフー映画の主人公のような構えを取った。



「リザードン!ブラストバーン!」

リザードンの口から赤を超えて真っ白な火球が吐き出された。


「そんなものがあたくしに当たると思って?」

体を大きくひねり、右腕を大きく左へ持ってくるとタイミングをはかり、


「?!!」

ブラストバーンを裏拳ではじいた。右の観客席前の地面は真っ黒に焼け焦げ
その温度の高さを表していた。

「馬鹿な!氷タイプが触れるようなもんじゃないはずだぞ?!」

そして自分の最も強い炎技をたやすくはじかれたことに驚いたのか
リザードンは地面へ降り、目を真ん丸くさせる。



その隙を突いて驚異的なすり足でリザードンの胸元へ潜り込む

「直接触れるわけ無いじゃないのぉん、あれはただのサイコキネシスよぉん」

真実を伝えたララバイは大きく振りかぶる

「でもこっちはれいとうパンチよぉん」

バキィン!

はじける氷、吹き飛ぶ巨体、相手トレーナーの左横を通り過ぎ
2,3回バウンドして後ろの壁へとリザードンは叩きつけられ、そのまま気を失った。



「リザードン、戦闘不能!ルージュラの勝ち!」

審判叫ぶ。沸き立つ観客やナレーターはもはや表現するものではない。



「お次、いらっしゃぁい。」
不敵にほほえみ、手招きするララバイ。




「ちっきしょー!リザ兄の仇取ってやる!」

そう叫んで出てきたのはライチュウ。



「戦闘再開!」
と審判





「うぉぉぉ!」

「ライチュウ!ボルテッカー!」


どんどん電機をまとい加速するライチュウ。それの威力さえも利用しようと
腰を深く落とし正拳づきをうつタイミングを計るララバイ。

そしてぶつかるかぶつからないかのタイミングで拳を突き出す。

捕らえたのは・・・・・・




「な・・・なんですってぇん?!みがわり?!」


ぼふん!と煙と共に向かってきていたライチュウは姿を消す。




「ララバイ!後ろだ!」
ケージェーは叫ぶが間に合わず。



「ライチュウ!きあいパンチ!!」

「うぉぉぉぉぉ!」

まさにララバイの真後ろ、斜め45度上からとびかかるライチュウ。
握り締められた拳はガードを組もうとする腕をすり抜け
ララバイの右胸を捕らえた。


「やぁぁぁぁん!!!」

吹き飛び、叫ぶララバイ。
元より物理攻撃に脆い体である。耐えられるはずも無く。






「ルージュラ!戦闘不能!ライチュウの勝ち!」


「よくやった!ライチュウ!」

「やったぁ!リザ兄!仇は取ったよ!」


「うぅ・・・あいつのほうが強いってのも癪に障るぜ・・・・」
かいふくの薬で体力を回復してなお痛む頭を擦りボソッと呟くリザードン。




「よくやった、ララバイ。休んでな。」

赤い光がララバイを包むとボールの中へと吸い込まれていく。


「ウォルテ、お前の番だ。行って来い。」

「了解しましタ。」


フワフワとウォルテがバトルフィールドへと向かう。




「戦闘開始!」

「ウォルテ!多連破壊光弾だ!」

「技コード、確認シましタ。発射体制に移りまス」
両腕を真横に向け、大量の光の弾が腕に実をつけていく。




「ライチュウ!来るぞ気をつけろ!」
叫ぶイエロー。

「ライライ!」
ポケモン本来の声をあげ、ライチュウは身をかがめ攻撃に備える。


「バトルセッティング完了しましタ。これより戦闘を開始しまス。」

言い終えるが早いや、両腕の光弾は弾き飛ばされたように飛び、
流星群の如くライチュウへ襲い掛かる。

「よっ!やぁっ!ラァイッ!」

右へ左へ、飛びはね転がり、打ち落とし、あらゆる手を使って
ライチュウは光弾をよける。


しかし、その間にもウォルテは多連破壊光弾の第二波を発射する。


「うぅっくそっ!危ないっ!」
何とか避けつつも完全に光弾を避けることに気が集中してしまったライチュウ。



ウォルテはその隙に次の攻撃の準備へ移った。


「ポリゴンZCX−0036、エアストライクフォルムを起動しまス」


両腕が羽のように変形し、光弾が飛びきらないうちに
ロケットの如く空中へと飛び上がるウォルテ。



「ウォルテ!ブリッツアーム!」
ケージェーが叫ぶ。


「ブリッツアーム、起動しまス。」



翼と胴体の間部分から光シャワーが豪雨の如くライチュウへと降り注ぐ




「うわぁぁぁぁぁ!!!」

さすがにこれは避けきれず、ライチュウは全身に何発も直撃する。


砂煙の中、一度は倒れ伏すもヨロヨロと立ち上がり
今一度目に闘志を燃やす。そしてその目は確実にウォルテを捕らえる。



「ライチュウ、まだやれるな!ボルテッカー!」


「ピピピ・・・・対象の戦闘続行可能を確認、攻撃準備を開始しまス」



「うぉぉぉっ!」

叫び声を上げ、ウォルテの真下で円を描くように走り回り、
スピードを加速、威力をドンドン上げていくライチュウ。


「ウォルテ!ハイパーフラッシュ!」



「ビビビ!」

ウォルテから光と共に周囲に360度に強い念動波が発射される。


「ライチュウ!怯むな!攻撃するんだ!」


「うぉぉぉぉぉ!ボルテッカぁぁぁ!!!」


飛び掛るライチュウ。その跳躍力は驚くべきもので
空中に居るウォルテへ届きそうだ。


しかし・・・・



「ピピピ・・・・対象の到達は不可能、休止モードを続行しまス」



やはり万物に等しくかかる重力には逆らえず
落下を始める。一瞬焦った表情を見せたケージェーがニヤリと微笑む。






そして、挑戦者イエローも微笑んだ。



「ライチュウ!今だ!雷神波!」


「ラぁぁぁいっ!」




ライチュウが身にまとっていた電撃がライチュウの形を象ったまま直進を続け
ウォルテに飛び掛らんと落下していくライチュウを尻目にウォルテへと飛び掛る。




「な・・・・なにっ?!」

驚愕するケージェー。直撃したウォルテはライチュウと若干タイミングをずらし
地面に落下した。両者共に動かない。



「両者戦闘不能!」




ザワザワとざわめく観客席。



「あんな技を隠し持っていたのか・・・・。」

驚くケージェー


「お前らよく戦った。後はオレが片ぁ付けてくっからよ。休憩してな。」

首から炎を噴出させ、バトルフィールドへと赴くサルサ。


サルサの登場と共に場内に流れていたBGMが変わり、両者の闘志をさらに高める。


対するはカメックス。




「はっはっは!挑戦者のイエローといったな。この施設でこの音楽が流れるのは初めてのことだよ。
正直私も驚いている。」

広いバトルフィールドをまたいでイエローに大声で叫ぶケージェー。


「ありがとうございます。初めての出来事はこれだけじゃ終わりませんよ!」
叫び返すイエロー。


「僕のカメックスが見事サルサに黒星をつけて勝利して見せますからね!」



「それはそう簡単になせる事じゃないぞ。相性だけで勝ったと思ったら大間違いだ。
ここはバトルフロンティア。僕はブレーン。負けてトレーナーの踏み台になるジムリーダーとは違う。
トレーナーを退け、打ちのめし、高い分厚い壁として君臨するのが僕達フロンティアブレーンと
そのポケモンたちの仕事だからね!」



「さぁ、泣いても笑ってもオレ達の勝負で蹴りが付くぜ?」
とサルサ


「最初からこうなる事になってたのさ。」
とカメックス


「なら最初からオレ達がやりゃぁよかったな!」
と、サルサ


「それじゃあ面白くないだろ?」


「試合開始!」
と審判


「ははは・・・・まったくだ!」

いうとサルサの首もとの炎の色がどんどん薄くなり、
ついには真っ白い炎になった。
そしてサルサの周りを陽炎が揺らめく。





「陽炎の二つ名は伊達じゃないってことか。」

ニヤリと微笑むカメックス



「カメックス!みずのはどう!」

ガチャン、と甲羅の発射口をサルサへ向け、水のはどうを発射する。




しかし



ジュワァァァァァッ!


「へへへ・・・・届いてねェぜ?」
今度はサルサがにやりと微笑む。


「蒸発・・・・しただと?!」


カメックスが放ったみずのはどうはサルサに当たる直前に
サルサの体温で蒸発してしまった。




「!!!」
「どうだい?攻撃は当たりそうかい?」

驚くイエローにケージェーが問う。





「ハイドロポンプだ!」


「言われなくとも!」


すぐに気を取り直し、今度はハイドロポンプを発射する。



「しゃらくせぇ!そんなもん当たるかよ!」

今度もサルサに当たる直前でほとんどが蒸発してしまいわずかにサルサの体を濡らすばかりだ。
それもすぐに乾いた。陽炎は濃くなるばかりである。




「くっそ・・・・このやろう!」

ドスン、と足を鳴らすカメックス。
するとカメックスの体の周りからザブンザブン・・・と次々にみずが湧き出してきた。




一時は二階席の高さまで到達した異常なな水量の「波乗り」の中へサルサは姿を消した。

焦りがカメックスの特性げきりゅうを発動させたのだろうか。

ちなみにケージェーの元へもひざの高さほどまでの波が襲った。










「はぁ・・・はぁ・・・・やったか?」


息遣いが荒くなるカメックス。




しかし、波が去った後にはサルサの姿は無かった。




サルサの立っていた場所には穴が一つ。湯気が立ちのぼる。中の水がことごとく蒸発したのだろう。




「サルサ!カタストロフィだ!」
ケージェーが叫ぶと次々に地面が盛り上がり、炎が噴出した。
あちこちから炎に包まれた岩やら土やらが吹き飛び、カメックスを襲った。



サルサが地中で大技「ふんか」を使っているのだ。




「ぐあっ・・・くそぅっ・・・・・ぐっ・・・・」

次々と飛んでくる火炎弾に身を飲まれたカメックスは
ついに肩ひざを付き、地面に崩れ落ちた。




そして一際強く盛り上がり噴出した火柱の中に鋭い眼光と黒い影が浮かび上がる。
この広いバトルフィールドを一瞬のうちに陽炎立ち上る不毛の荒野へと変えた張本人だ。





「カメックス・・・戦闘不能!よって勝者フロンティアブレーンケージェー!」
室内へと非難していた審判がバトルフィールドへと戻ってくるとそう告げた。









ワァァァァァァァァァ・・・・・・・

歓声が上がり、消火用の水が降り注ぐ。
その中で、挑戦者とブレーン。
そして回復が終わったポケモン達はお互いの健闘を称え合った。





今日も彼らは挑戦者を退け、バトルフロンティアの一日に派手な華を添えたのだ。