カタチ  作:うみちゃ 投稿日時:11/1/24


ポリゴン2・・・・・いや、今日からお前はポリゴン3だ。

いいかね?ポリゴン3。













・・・・・・・なんてことだ。



これではポリゴン2と同じだ・・・・。
私が作りたかったのは生き物に似た機械ではない・・・・。
機械に似た生き物を作りたかったのだ・・・・・。




マスター。ご期待に沿えずもうしわけありませン。












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「ピピピ!」



石造りの巨大な廊下。小さくブザー音が鳴り響いた。

その声を上げた本人は『メモリを整理しまス』と一言発すると
まるで突然声を上げたことを反省するかのように黙り込んでしまった。


「あっちゃー・・・・そうだ、すっかり忘れてた。」

と、声を漏らしたのはバクフーン、サルサ。
頭を抱えた後に 動くかな と一言。今起きた小さな事件の犯人、ポリゴンZのウォルテを動かそうと試みる。
しかし、手をかけて三秒。すぐに離れた。


「どうしたのぉん?ウォルテ君動かなくなっちゃったけど」

心配そうに・・・・というよりは興味しんしんにウォルテとサルサを見つめるはルージュラのララバイ。


「こいつはさ、毎年製造日になると一年分のデータを必要なデータと不必要なデータに分けて処理するんだと。
しかもその動作をしている時はアップデートしてるときと一緒でナントカっていう機能でこの空間に自身を固定するんだと。」

誕生日、ね。とララバイに言われわりぃと一言。
なんにしてもこの状態でしばらくの間は動かないという事。

その場で少し考え導き出した答えは


「別に盗まれやしないし後で見に来ればいいか。」




















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M:・・リ・3・・・にお・・


削除




F1:ふ・ふ・・ゴ・3はと・・・か・こい・・




削除






*:こ・・だ・やくつ・・・ろ



削除



I:ワ・・は・・・・・・・・・・・・・・で・




削除










011011001001:ようこそ!ぼくのいええ!これからきみはぼくらのふぁみりーさ!


検索・・・・

検索・・・・



検索結果:ふぁみりー【family】1 家族。家庭。「―カー(=一般家庭向けの実用車)」2 族。群。一門。「―の一員」

保存


110111:それでいいんじゃねぇのか?。





保存。



110111:おまえはまだひとりぼっちになんかなっちゃあいないんだぜ?





・・・・・保存。







*:ばいしょうきんのほうはしはらってもらえるんでしょうね



削除



*:すごーい

・・・・・削除。

















............................................................END







沢山の事を思い出したり忘れたりした僕のメインメモリの中はとてもすっきりとして暖かい気持ちになった。

これが生きてるということなのだろうか??













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「そうか、もう一年になるんだな。」

「そうね。でも1年でずいぶん変わったわ。なんというか生き生きしてるわ。」

「それはオレも思ったぜ。」

「ふふふ・・・わたしのおかげだな!私がしょっちゅう夜に散飛に連れて行っているからだな!」

「お前のせいであいつがどんどん変なこと覚えてるんだよ。この前街中でお前の恋話4つも暴露してたぞ。」

「ななな!なんだと?!」

「え〜・・・意外とクーちゃんって遊んでるのね〜。」

「なんだっけ、初恋が15歳の時で年上のピジョットの・・・・」

「わわわっ!そっそれ以上言うな!」

「あー。クーちゃん顔真っ赤よ。それにしてもその頃から年上好きだったのねぇ」




食事中の他愛もない会話。その中サルサは心の中で小さく微笑む。


よかったなぁ・・・・。











〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



ある日の午後。ケージェー宅のリビング。

一見すると壁とも取れてしまう巨大なテレビに映し出されるもみのんたの顔には中々の迫力がある。



「次のニュースです。」

「先日、ホワイトウインド山脈の奥で発見された反民主主義グループのアジトから
新たな進展があった模様です。」

「現場のまさこさん?」

「はい、こちら現場のまさこです。先日発見されたアジトの奥から違法に改造が施されたポリゴン2及び
アップグレード用のパッチデータロム。そしてそのポリゴン2の複製品と思われる25機の・・・・なんといいますか。
ポリゴン2と申していいのでしょうか。『それ』が発見されました。あ、今運び出されているあれですね。
カメラさんこっちこっち。」


「まさこさん?何故数日たった今発見されたのですか?」

「あ、はい。こちらのデータによりますと発見された当時は保管庫に厳重なロックがかかっておりまして・・・・・」









「酷いことするなぁ・・・・。」

ケージェーはニュースを見て呟いた。

「いくら人口のポケモンだとはいえ、まさか戦闘用に改造された挙句『あれ』扱いだなんて・・・。」

全くその通りだ。これではどちらが心無き機械なのかわからない。


「でも興味があるな。ちょっとチャンピオンに連絡して掛け合ってみようかな」


掛け合う?何を。



「決まってるじゃないか。あのポリゴン達を引き取ろうとね。」



ケージェーは変わっている。


ケージェーというか彼の持っているものは変わっている。
いや、あいつも変わっているのだ。だから類は友を呼ぶの如く変わり者を集める。


「あー、もしもし?ニュースで見たんだけどさ、あのポリゴン貰えないかな。」


俺にしろクーラントにしろララバイにしろ一族の中では爪弾きにされていた連中ばかりだ。


「ん、全部全部。え?なんで?なんで?」

「あ〜・・・そういう問題があるのね。でもぼくならいいでしょ?」

あの自信はいったいどこから来るというのだ


「はいはい、それじゃあヨロシクね。あ、博士たちにはそっちから伝えてくれるの?ありがと。」




ガチャン



今でも機能してるのが不思議な非常に旧式な電話の受話器を元に戻し一言。



「よっしゃよっしゃ。サルサ、行こうか。」














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「え?!話が違うじゃないか!」

「いやいやいや、それはそっちでしょ。まだわからない、って言ったじゃない。」

ここはシルフカンパニーアンタルヤ支社。


「そう、こればっかりはかわいそうだが仕方ない。ワシもどうにか助けてやってくれ、とお願いしたんじゃがなぁ・・・
軍部の決定じゃ。ワシ等リーグの関係者じゃどうにもならない話じゃ。それに元となったポリゴン2でさえ
本来なら法律に抵触しとる。権利がシルフカンパニーのほうにあってあのアップグレードに興味を持ったからいいものの
そうでなくては彼も一緒に処分されることになっとった。せいぜいかわいがってやりなさいよ・・・。」

「そんな!そんなの勝手だ!勝手に作っておいて人間の決まりに反しているからって処分、だなんて・・・。
あいつらは生き物なんだぞ!ポケモンなんだぞ!そんなのって・・・・」

「残念ながら、彼らは生き物の定義にもポケモンの定義にも反してますな。」

後ろから現れた壮年の軍服姿の男が語る。

「ポケモンの定義はモンスターボールから照射される光によってデータ化、そして実体化が可能な生き物の総称。
この国における生き物の定義は自分で思考し行動する有機物質の事。純正だったと思われるあのポリゴン以外は
すべて無機物。そしてモンスターボールに入れることは不可能。それだけならまだしも非常に強力な対空陸海の
武器を備えている。アレをさすがに民間にばら撒くわけにはならん。軍部は維持費などの面から兵器として
引き取ることも拒否した。この状況で廃棄以外にどうすればいいのだ。」

「そんなの・・・・どうにでも・・・・・。」


ケージェーは口をつぐんでしまった。

そして研究服姿のメガネの男が現れる。


「フロンティアブレーンのケージェーさんですね。ポケモンも一緒にこちらへどうぞ。」

奥へと案内される



「あのポリゴンは非常に良く出来ていますよ。まるで我々が作ったかのようだ。」



「ただ、ポリゴン3は現在製作中なので3の型番を与えるわけにはいきませんでね。ポリゴンZと名づけることに
したんですよ。」





歩きながら研究員風の男はさもうれしそうに語る。


「着きました。ここに彼。ポリゴンZは居ます。」





いかにも重厚で、厳重な会社の中とは思えない荘厳な雰囲気漂う扉。
研究員はピピピと暗証番号を入力し、カードキーを挿し、指紋認証と網膜認証を終えた後最後に鍵を挿し回した。


そこまで危険なものなのか、と思った数秒後研究員は呟く


「実はこれ、本当は鍵だけで開くんですよね。支社長の趣味で会議室もこのドアになってるんです。
通過儀礼じゃあないですけど楽しいからみんなやってるんですよ。」

さすがこのあたりは天下のシルフカンパニーだ。遊び心を忘れないから様々なヒット商品を生み出し続けられるんだな。


「こいつが・・・?」


ケージェーの問いかけに研究員はにこりと笑って頷く。



次の瞬間ケージェーは涙をぽろぽろと零しそのポケモンに駆け寄るとがくりとひざをつきぎゅっと抱きしめた。


「ごめんな、オレにはお前を助けるので精一杯なんだ・・・・。大変だったな。これからはもっと楽させてやるからな・・・。」

研究員はどうも決まりが悪いのか、にこりと笑った表情にまた違った表情を重ね、
先ほどとは行って変わって事務的に言った。


「所有者変更は済ませてあります。今すぐにでもつれて帰れます。
ただ、まだ生まれて期間が短いので赤子も同然です。どうやら非常に高度な学習能力を持っているようなので
4ヶ月もすれば一通り不便なく生活できるでしょう。内部プログラムのほうもただ一つを除いて問題なく動作しています。」

ケージェーは涙を拭き抱きしめたまま振り向く。

「ただ一つ?」

白衣のポケットの中からCD-ROMを取り出した研究員は言う


「ええ、ただ一つを除いて。このパッチには本来のポリゴン2には存在しない追加機能が沢山あります。
空陸海どころではないあらゆる局面に合わせた沢山のフォルムチェンジ。破壊光線の反動軽減機能。
純正シルフカンパニーの物とは比べ物にならないほど高度なAI。」

「しかし、それらは大きく見積もってもこのロムの中身の8分の1程度。
残りのデータはすべて、一つのプログラムであり、エラーの塊でした。」

「おそらく、ですがそのデータ―――このパッチの作者がポリゴンに持たせたかったものは」


もったいぶらずに早く話せ、とサルサは心の中で思った。






「感情・・・。心、でしょう。」

「しかし、これは研究者という立場からしてみればやってはいけない事だと思うんです。
私たちは人間であって神ではないんです。研究者であって神ではないんです。」


そう、か。とケージェーは言い、ポリゴンZをボールの中へ戻した。





「一応そのデータのインストールはしておきました。このプログラムは心を形作ろうとしていますが、
核となる『心』というファイルが欠損していました。これはこのロムの中には入っていなかったので。」

「あなたが見つけてあげてください。このポリゴンは自分に足りないデータを学んで、自身の構成プログラムに
加える能力もあるようです。まるで、生き物のように。」



ケージェーはポリゴンZの入ったボールを静かに見つめた。

オレには今、あいつが何も思っているかはまだ読み取れない。
静かに一通りの出来事を見守ったオレは心の中で呟いた。



「こいつと一緒にあいつらの処分に立ち会おう。けじめとして。」



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数日後、とある町の工場。


とても大きな工場の入り口には若者たちが今日ここで行われる
「違法兵器」の処分を取りやめるよう求めている。

続々とあつまる軍部関係者やシルフカンパニーの幹部。
現チャンピオン。そしてケージェーだけが行くと決まりが悪いということで
フロンティアブレーンたちも急遽立ち会うこととなった。

この状況を見てテレビの取材班もテンションが上がる上がる
「すごい、すごいです。チャンピオンにフロンティアブレーン。さらにはリーグの四天王までもが集まっています。
ショーテントプロデューサー。スラムビックボス。タワータイクーン。フォーチュンスペクター。クラブソーサラー。
彼らが同じ画面に画面に集まることは中々ありませんよ!今回の出来事はそれほどの事だというのでしょう。」








処分は緩やかに進行し、そしてすぐに終わった。
彼らは非常に希少な材質で出来ていたため残骸(なきがら)は飛行機などに再利用されるそうだ。

ひんやりとした部屋の中。まるで時間が止まったかのようにすべての存在が動きを止めていた。
その部屋の中。ドアの過重ロックもどきとは似ても似つかない様な申し訳ない台座の上にプレミアボールが一つ。

ケージェーはそれを手に取りぽい、と投げる。




赤い光の中から姿を現したのは青い色違いのポリゴン2・・・・に似たポケモン。



















「おいで、ウォルテ。」


光の中から先日仲間に加わったポリゴンZが姿を現す。

「サルサ、クーラント、ウォルテのことをお願い。僕はあっちで話があるから。」


そういうとケージェーはすたすたと歩いていってしまった。
今日も後姿は派手なスーツだ。黄色と紫の直視すると眼が痛くなるようなストライプ柄。
頭に飾った白ぶちのサングラスを外すとあちらこちらに頭を下げて挨拶をしている。





「おい、ウォルテ。」

オレはウォルテに話しかける。

「お前は今何を考えてるんだ?」


「・・・・・・」


何も返事がない。



「ははは!ウォルテよ!私はクーラントだ!仲良くしようじゃないか!空が飛べるらしいな!今度一緒に・・・・」


クーラントは一人でご機嫌だ。




ふぅ・・・・さて、相手が何も反応してくれないんならどうしたものか。







「サルサさま」


ウォルテが口を開いた。

「私はウォルテと申しまス。以後よろしくお願いしまス。」

困り顔が笑い顔。あぁ、よろしく、と手(?)を一方的ではあったが握り、握手をする。
クーラントが自分には挨拶はないのか、と喚いているがほっておく事にしよう。



「さて、三人とも、帰るよ。」






===================







家に着くと留守番組がウォルテの歓迎パーティを準備し終わっていた。


「さて、ウォルテ。」

前を歩いていたケージェーがリビングの入り口で立ち止まり、後ろを着いていっていたオレやウォルテの方を向く。
オレはまったく空気を読まないクーラントを引っ張り一足先にリビングの中へ。



「ようこそ!僕の家へ!これから君は僕らのファミリーさ!」

がちゃり、とドアを開ける。するとポケモンたちが不器用なりに準備した歓迎パーティの準備。
オレも事態を読み込めずパニックになっているクーラントを尻目に留守番をして
ウォルテの『帰り』を待ちわびていた彼らの中へすっと混ざる。




「ありがとう・・・・ございまス。私のためにこんナ・・・・・。」

「さあさあ!中へ入って!」

「すごーい!色違いだ!」

「空飛べるって本当?」


etc
etc

まるで転校生がやってきた小学校状態。
ニコニコと応対するウォルテを見てオレは少し安心した。











ひととおりパーティが終わってウォルテのフリーになる時間も増えてきた頃。
オレはちょいちょいとウォルテを連れ出し、ケージェー城の中でも飛び切りお気に入りの場所。
5階のケージェーの衣裳部屋の窓から出た所から屋根をよじ登った所にある城の内側からは入ることの出来ない
特別な部屋へ案内した。


そこは少々埃っぽいが屋根の半分は崩れていて夜空が見渡せるので
夜眠れないときなどはよくここでぼーっと夜を明かすのだ。

オレとクーラントがこの城に初めてやってきたときに見つけた場所。
以来オレとあいつの秘密の場所で誰にも教えることはなかったのだが
不思議と気付いたらウォルテを案内していた。


「どうだった?パーティは楽しかったか?」

「はイ、皆様とてもやさしくテうれしかったでス。」

「オレも安心したぜ。実はケージェーの野郎にウォルテには感情がないんだーみたいな事を言われててさ、
いったいどうなることやら、って心配してたんだ。」

ちょっとおどけてためしに言ってみたサルサ。
間髪置いてウォルテは言った。


「ありませン」


「私には感情はありませン」


でも、今、楽しかった。って・・・・。

ウォルテは先ほどのニコニコした表情をはうって変わって無表情になり続ける


「モモンの実を食べてあまイというのは簡単でス。計算の答えを出すのは簡単でス。
それと同じようニ私は先ほどの状況から判断しテ最高の反応ヲしただけでス。私は心から
笑いたイあなたのようニ、クーラントさんのようニ感情表現をしたい。」


彼の眼は一転の曇りもなくどこまでも澄みきっていた。

しかし、生き物とするにはあまりに曇りがなさすぎた。


その曇りなき瞳で彼は夜空を見上げる。綺麗ですね、と言った彼の心(AI)は何を思うのだろう。





「私、実は涙を流す機構がありまス」

そうだな、とオレが言った後彼は驚くべき知識量でオレに色々な星座や星の名前を教えてくれた。
そして次の星座の名前を口にするであろうタイミングで彼はそう言った。



「涙?」


「はイ、泣く事が出来るのです。しかし、泣いたことはありませン。私は周りの人を幸せにするようプログラムされていまス。
涙は人には幸せを与えませン。だから涙は流したことがありませン。兄弟が残骸へとなっていく時でさえ
私は一滴の涙を流すことが出来ませんでしタ。」



あぁ、なんて哀れなんだ。

生き物に近づきすぎたがために罪悪感を覚えることは出来ても、その罪を償う術をわからないのか。





「制御不能でス・・・・。私にはこの感情というプログラムを処理できるほどの
メモリ容量を持っておりませン・・・。」



なぜだろう、あまりの自然さに不自然さを覚えた。
彼は今、悲しんでいるのだろうか、それとも本人の言うとおり状況反射で「悲しむ」という事をしているのだろうか。

その眼は釣り下がり、今にも涙を零しそうだった。そう、零しそうだったのだ。




今日は新月。星の光とオレの点した炎だけがあたりを照らしていた。
明日からは月が現れ始めるだろう。



「それで、いいんじゃねぇのか。」

「そうやって悩んで生きていけばいいんじゃねぇのか?お前はある意味生き物より生き物らしいぜ。」

「苦しみを苦しもうともせず、感情を感情としようともせず、何も感じずに何も考えずに生きていく
この国の人間どもよりはよっぽどあるべき生き物の姿をしてると思うぜ。」

「おまえはまだ一人ぼっちじゃねぇ。これから減った分だけ仲間や兄弟は増えてく。
何も血のつながりだけが兄弟じゃねえ。種族や考え方が違ったって家族になれるんだ。」

「ぜいぜい悩んで悩んで悩みまくりな。お前はオレ達よりよっぽど頭がいいんだ。
オレ達生き物よりもずっとな。だからオレ達が考えて知ることをあきらめちまった大切なことも
お前ならわかるかもしれねぇな。皮肉な話だが。」




風が抜けた天井から入ってくる。埃は宙を舞いオレの鼻をくすぐった。


なんだろうな、心って。きっと持ってるうちはわかんないもんなんだろうな。
機械みたいな生き物が忘れた物。生き物みたいな機械が欲して已まないもの。
生き物はそれがあるが故に悩み、機械はそれが無いがために悩む。

他人が持ってるものはうらやましく見える。だがそれは持っている本人からしたら邪魔なだけなのかもしれない。


「私の目標が出来ましタ。」


ん、なんだ?、とウォルテのほうを見る



「私はいつカ、兄弟たちのためニ泣き、そして彼らのために「生きたい」そして「死にたい」です。
きっと、機械としてこの世に生まれたものでモ、生き物としテ終わりを迎えられるはずでス。」

ほっと、心が温かくなるのを感じた。ふぅ、と口から吐息が漏れ胸がなでおろされる感覚。

「そうだ、その意気だ。」

「そろそろ戻るか、オレはまだしもパーティーの主役が居なくなっちまったらさすがにみんな心配するだろ。」

ウォルテはそうですネ、というとこの部屋の入り口まで行きこちらを振り向く。
その顔はとても綺麗に笑っていた。曇りの無いどこまでも純粋な心で。