カブルモの進化した日〜槍にならなかった右腕〜  作:ショッキン 投稿日時:11/6/25


これは、俺の友人、アーサーがカブルモからシュバルゴに進化したときの話だ。

その日いつも通り日課のサンドバッグ殴り1000回をこなして友人達と集まったんだ。顔を合わせてた戦いあってお互い強くなるのが目的だった。
まぁその日は違う目的もあったんだけどな

集まったのはゲンガーのデュラハンとカブルモのアーサーだ。他にオコリザルなんかの複数のポケモンも来た。

デュラハンはいやらしい戦いをする奴で
わざと自分の体力を削って相手を道連れにする。
あまり俺たちのような力業を使う奴らとは本来気が合わないんだが、何らかの集まりをするたびに勝手に集まって参加してきて、いつのまにか仲良くなってた。
んで、問題のアーサー。
体は小さいが凄く勇敢な奴で、騎士道精神溢れる奴だ。昔俺がピチューだったときに一緒に力を合わせてリングマを倒すときも一緒だった。
前に山登りの修行をしていたとき、崩れたがけの下にチョボマキの物だったらしき鎧が落ちているのを発見した。アーサーは重そうなそれを修行に使えると判断して、それがある場所まで崖を下っていったんだ。
俺もそれに付き合って一緒にがけを降りた。
んで、肝心の鎧の場所まで来たんだが……なんつうの? あれだ

錆びてんだよ、凄く。
そりゃがけの下にあるような鎧だ。ずっと放置されてるだろうし、放置されてるなら錆びて当然だ。
でもずっしりとした重みのあるそれをアーサーは気に入って被ったんだよ。これで重しの代わりになるってな。
んでまぁ、その日はそれで終わったんだ。
次の日からアーサーはそいつを被り続けてバトルや修行なんかを繰り返した。
最初はウンウンうなっていたけど二、三日もすれば
慣れて普通に運用できるようになってた。
数日後、友人達でバトル集会を行うことになったんだけど、その時にアーサーが「最近身体に力が張ってきています。もしかしたら進化するのかも知れません」って言ってきた。
あぁ、アーサーって今俺が言ったみたいにですます口調なんだよ。
それでまぁ皆「マジかよー」とか「やったじゃんー」とか言ってたわけ。
それで問題の日、そろそろ進化しそうだってアーサーが言うんで、皆で集まって、進化しようぜって話になったの。
七回か八回か? それくらい手合わせして、アーサーの身体が光ったわけ。
「進化だー!」「ついにアーサーもシュバルゴかー」って皆大騒ぎ。騒ぎながらもじっとアーサーの進化を見守ってたんだ。
でも、何か様子が可笑しい。
進化してからだが変わっていくんだけど、所々で……なんていうの? 引っかかるんだよ。変化している途中の光が一瞬止まって一気に動くって言うの?
そしたらデュラハンが
「ちょい、ショッキンの旦那、アーサー氏の右腕の部分、ちょいとおかしくなっとりませんかい?」って言ってきた。
それを聞いて右腕を見たんだよ。そしたらもうやばいの。
引っかかりまくって形が歪になってるの。よく見たらアレだ、鎧の錆びてる部分に引っかかってるんだよな。で、だんだん引っかかりも安定して、スムーズに進化していったんだけど、右腕の部分が槍の形じゃないんだよね。もっと平べったくて三角形なんだよ。それでいざ進化が終わったら、右腕が剣なんだよな。皆唖然。本来縞々の灰と赤のはずなんだけど、刀身の外側が紅く、中の方が灰色の剣になってるの。あれだ、引っかかって歪な形になってた右腕がちょうど剣の形になってたんだな。時が止まったね。皆黙り込んで……
でも、そこはアーサーだよ。
「右腕が剣、左腕が槍……これは素晴らしい。剣技と槍技の両方が扱えますね」だと
よく考えたら本来槍が二つなのと比べて戦略の幅が広がるなと皆思い立って、「なんだたいしたこと無いじゃん」「むしろ特じゃん」みたいな空気に変わってったんだよね。
で、早速闘おうぜ! って事になって、俺が渾身のメガトンパンチを喰らわせたら、アイツ、かってえの何の。結局その日は皆で全力で攻撃したけど、アーサーの鎧に傷一つ付けられなかったな。しかもアイツが槍で一度突き刺すたびに、剣で一度切ってくるたびに岩は貫かれるし木は伐採されるし……攻撃力高すぎだろってね。まぁ動きは鎧の性で遅くなってたけどな。正に強い! 堅い! 遅い! の典型って感じでよ。

まぁあいつが進化したときの話はこんな感じだ。
今でも思い出すたび笑い話だ。本来槍なのが剣になってるし、その後皆沈黙するけど実はたいした問題じゃなかったし、そこら辺が俺たちの間でツボにはまったって感じだよ。また何か話が聞きたくなったらきな、新米トレーナー。いつか俺をゲットしてみせるんだろ? 気が向いたら今回の話に出たデュラハンとアーサーにも声を掛けてやるさ。じゃぁな