蒼い瞳、紅い瞳  作:兎月 投稿日時:11/6/26


……あぁ、今夜も月が綺麗だな

…ん?なぜ月が気になるのか…か?

…少し、古い話になる、良いか?
……ありがとう、では、話そう







…私は、生まれた頃から、この左目は紅かった、
そう、まるで血の様に

…当然、周りからは避けられた、
「妖怪の血が流れている」
「化物」
「汚れた目」
さまざまな呼び方をされた


……何時も、一人だった、
そして、決まって悲しい時は、
一人で、月を眺めていた

…そんな時だ、とある者が、当時、
まだ幼く、孤独だった私に…こう言った

「綺麗な目だな」…と

驚いて声の主を探した、でも見つからなかった

ふと、肩に手を置かれた、びっくりして振り返ると
そこに居たのは、マニューラと呼ばれる種族の、
変わった服装をした旅人だった

…そして、びっくりしたのが、
その者の目は、とても青かったのだ

普通、マニューラと呼ばれる種族は、
目が紅いのが普通だったはず

だが、目の前に居る旅人の目は、
とても綺麗で、氷の様な青色をしていた

「…私の…目が…綺麗…?」
慌てて、左目を隠した、
何時の間にか私も、この目を見られるのが嫌に
なっていたのだろうな

すると、その旅人はこう言った
「あぁ、綺麗だとも、なんで隠すんだ?」

本当に不思議だった、皆、この目を拒んでいるのに


「皆…私のこの目を…」
理由を話すと、その旅人はこう言った

「目の色が違うだけで、そんなに拒まれたのか…
可哀想に…」

ぽん、と頭の上に乗せられた旅人の手は、
とても鋭い爪があるのに暖かく、
氷の様な色をしている旅人の目は、
鋭く、冷たそうなのに、見つめられると、
とても安心した

「…貴方は、怖くないの…?」
「怖くなんかねぇさ、全然な、
そんな綺麗な目なのに、どうしてそんなに、
皆怖がるんだかなぁ…」
隣に座った旅人は、私と同じ様に、
月を見上げた

「…綺麗な月だなぁ…」
「…うん、とても、綺麗……
だけど、寂しそう…」

月は、他のどの星よりも目立って、
とても綺麗だ、だけど…

とても寂しそうだった、私には、月が、
私と同じ様に一人ぼっちだと、
当時思っていた

「…そうか?確かに、他の星より目立ってるが、
寂しそうに見えるが…
ほら、周りを見てみろよ」
夜空を指差す旅人、その指差す先を見た

幾千、幾億とも数えられる、小さいが瞬く星

「あんなに、仲間に囲まれて…
きっと、全然寂しくないかもな」
「…そう…かな…」

…でも、私は、ひとりぼっち、
周りから除け者にされ、
怖がられる

何時も一人だった

「……じゃあよ、俺が、お前の友達になってやる」
「え…?」
「俺が、お前の友達になってやるって」

ニッと笑ったその旅人の笑顔は、
私に向けられていた

初めて、笑顔で自分を見てくれた

初めての、「友達」

それからというもの、度々その友達とあっては、
色んな事を話したり、一獅ノ遊んだり、
色んな事をして、楽しんだ

だが…その初めての友達は、
とある日を堺に、出会う事は無くなった

…それで、私はこう思った

『月を眺めていれば、また、会いに来てくれる、
何時の間にか後ろに居て、肩に手を乗せて、
蒼い綺麗な目で、笑ってくれる』…と

だから、私に、初めて友達をくれた月が、
好きなんだ

…人に昔話をするのは、得意では無いな、
長く話してしまって、すまなかったな