過去。  作:ガルス(PL:めりやす) 投稿日時:11/10/14


「エナメル、お前ってさ、バトル嫌いなのになんでそこまで強い?」
「…知りたいか?」
「ああ。これで聞くの何回目だと思ってる?」
「まあ、あんまり話したくは無い事だからな…。」

エナメルには何回もその事を聞いたが、絶対に教えてくれなかった。
今回も突っ撥ねられるだろうと思っていたのだが…反応が違った。
俺たちはしばらく沈黙した。

―そしてエナメルがゆっくりと口を開く。

「まあそろそろ、お前になら話しても良い頃だろう。
俺の過去に何があったか…。」

俺はただ、静かに聴いていた。





俺が守れなかった奴が1人…いた。
そいつはもともと俺の…トレーナーだったよ。
良い奴だった。本当に―。
だがある日、事件があってな…。
そいつは、俺たちを危険に晒さない為に一旦全員逃がした。
…そして、1人で向かい…帰ってこなかったよ。

それから俺は、復讐の為に力をつけた。
…だがある日気付いた。この力をどうする?
これだけの力をつけて―何をする気だ?

行く先を無くし、どうする事もできなかった。
そして…何日寝込んだか。
自分の行き先をやっと見つけた。





「―で、それが今やってる『守る』って事だ。
結局、俺は何も守れてないのかも知れないが…。」



エナメルは寂しそうに笑っていた。
目には涙が溜まっていたが、無理に隠そうとしていた。

悩みを隠そうとするな―いつもエナメルが言ってる事じゃないか?
…と言いたかったが結局、言えなかった。