偽りのシアワセ  作:セイラ 投稿日時:12/4/26


「 みんなの、幸せを護りたい。 」

そう願ったのは、いつのことだったっけ。
そのために、強くなろうと決めたのは、
みんなを支えていこうと決めたのは、

どうしてだったっけ。


ぼくのたった1つの願い事。
それは、みんなが笑顔で、幸せでいてくれること。
ぼくの大事な親友、家族・・・
ぼくにとっては、大切なひとたち。

みんなの幸せを、僕は願った。


みんなみんな、何かしらの問題を抱えてる。
ぼくらだって、そう。
ぼくたちの世界には、不幸を食べる悪魔がいる。
不幸を食べて、強くなる悪魔。

ぼくの友達、ルイくんは、その悪魔に利用されて、
そして、おかしな体にされてしまった。
ポケモンの姿なのに、ポケモンじゃない。
生きているのに、生きてない。

ルイくんは自分のことをゾンビって呼んだ。


リシェルちゃんが、さらわれた。
原因は、ぼくがリシェルちゃんを、
「彼女」に友達として紹介したから。
ぼくたちが楽しそうに話してたから、幸せそうにしてたから、
リシェルちゃんをさらったと「彼女」は言った。

ぼくがしたことで「彼女」に不愉快な思いをさせてしまったのかな・・・

リシェルちゃんがさらわれたのは、ぼくのせい。


ルイくんが、暴走した。
原因はきっと、リシェルちゃんがいなくなったから。
ルイくんにとって、リシェルちゃんは大事なひと。

「幼馴染」以上に大切な・・・家族。

そんな大切なひとを失ったルイくんの心は不安定で、
不幸を食べて強くなる、悪魔のちからに呑まれてしまった。

でもそんなルイくんを助けてくれたのは、「彼女」
リシェルちゃんをさらった、「彼女」
「彼女」の「おかげで、ルイくんは元に戻れた。
元の、普通のポケモンに戻ることが出来た。

・・・ぼくの友達を、助けてくれてありがとう。


なんだか、最近、すごくさみしい。
中々、みんなとお話したりできないからかな・・・?
みんな、ぼくのこと・・・見てくれてない気がする。

わかってる。みんな忙しいって。
みんな、色々抱えてるから、やることがたくさんあるって・・・
だから、我慢しなくちゃ。
それでも・・・

なんでこんなに辛くて、苦しいのかな・・・?

「セイラくん!みんなに許してもらえたよ・・・!あの時のこと・・・!」

ルイくんが嬉しそうに、話しかけてくる。
暴走した時のこと、みんなに許してもらえたんだ・・・
すごく、良いことのはずなのに・・・

なんでだろう?
全然嬉しく感じられないよ・・・


今日、「彼女」に出会った。
ぼくは「彼女」にも、幸せになって欲しい。
だってぼくは、「彼女」とも友達だって、信じているから。

でも、みんなにも幸せになって欲しい。
リシェルちゃんや神かくしに遭っているみんなを助けるには、
「彼女」をバトルで倒すしかない。
そう、「彼女」は言っていた・・・

だけど、それだと「彼女」を幸せには出来ないと思う。
でも、倒さないとみんなを、リシェルちゃんを助けられない・・・

もうどうすればいいのか、わかんないよ・・・

頭の中、めちゃくちゃになってくる。
どうすれば、みんながみんな、幸せに・・・


あれ?

どうしてぼくは、

みんなが幸せになって欲しいんだっけ?

どうして皆を幸せにしなきゃいけないんだっけ?

みんな、ぼくのこと・・・

見てくれてもいないのに・・・


ぼくはようやくわかった。
ぼくが皆の幸せを望む、本当の理由。

それは、ぼくはみんなが好きで、幸せでいてほしいから。
笑顔でいてほしかったから。
そして、ぼくを見ていてほしい。
ぼくと一緒にお話して、ぼくと一緒に遊んで、

ただ、ぼくのそばにいてほしかったから・・・
それがきっと、僕の願った「幸せ」

でも、みんなはぼくを見てくれない。
当然だよね。ぼくが今までやってきたこと・・・

「彼女」に不愉快な思いをさせちゃったのも、
リシェルちゃんがさらわれたのも、
そして、ルイくんの暴走も、

みんなみんな、ぼくのせいだったもん。
ぼくがその原因だったんだから。

そんなぼくが、幸せを手に入れることなんて・・・


ぼくは決めた。
みんなの「幸せ」を護る。
みんなが「幸せ」でいてくれるのなら、ぼくはそれでいい。
それ以上を望んだら、すごく苦しくなる。

それに、ぼくはみんなが大好きだから。
大好きなみんなが幸せでいてくれるのなら、
ぼくは・・・


それで充分、幸せだから・・・