「なあ、竹取の翁の娘さんの話、聞いたか?」
「何でもすごい美人らしい」
「なかなか姿を見せないんだと。だったら余計に見たくなるな」
世の中のオスのポケモンは皆、このかぐや姫を手に入れたい、妻にしたいと思っていた。
彼らは翁の家の周りにやってきてはこっそり中をのぞき込み、姫を見ようとした。
しかし姫は家の中、滅多に外には出ようとしない。
せめて一言何か伝えようとしても、翁も媼も応じようとしない。
「誰にも会いたがらないなんて、相当わがままな姫なんだろう」
そのうちにあきらめる者も出てきた。
しばらくするとほとんどの者が来なくなったが、依然として言い寄る者もいた。
それは粋人と評される者5人。彼らの恋心は静まる時がなく、夜昼かまわず訪ねてきた。
ここで彼らの紹介をしておこう。
まずは都からはるばる来た皇子のブラッキー。
次にブラッキーの双子の弟エーフィ。
この2匹は仲が悪いことで知られていた。
家に頻繁に通う執念だけでなく、お互いの足の引っ張り合いもすさまじかったらしい。
そして“貴族階級”が3匹……
右大臣ブースター、大納言シャワーズ、中納言サンダース。
位の付け方がどういう基準だったのかは分からないが、とにかくバトルには強かったようだ。
少しでも美しい女がいると聞けば我が者にしようとする者たちだったので、
かぐや姫に対する執着心は並大抵のものではなかった。
恋文を書いて何度も送りつけたが、いっこうに返事が来ない。
ある時は翁の前に土下座までして頼み込んだ。
冬の寒い日にも、嵐の吹く夜も、彼らはやってきた。
家に帰っても、彼らは何とか姫に気持ちを伝えたくて祈り続けた。だが恋心は収まらない。
「だからといって最後まで独身ということはないだろう」と思って、その点に頼みをかけた。
無理にも姫に気持ちを分かってもらいたいと思い続けた。
この有様にあきれた翁は、かぐや姫に「なぜ結婚しようとしないのですか」と聞いてみた。
かぐや姫は答えた。
「どうして結婚などできますものか」
「あなたは確かに特別な存在かもしれません。しかし、この世の生き物は結婚というものをするのです。
どうかよく考えて、どなたかおひとりと結婚していただきたい」
「でも私の心を理解しないまま、浮気心を起こすかもしれません。そうしたらあとで後悔するかもしれません。
たとえ高貴な人であっても、ご愛情のほどを確認しないことには、結婚するわけにはいかないと思うのです」
「確かにそうかもしれません。でもどの方も並大抵ではない愛情の持ち主です」
「どれほどのお心の深さか、判別しようと言うのではありません。
この人達の愛情はほとんど等しい。でもどの方がすぐれているかは分かりません。
5人の中で、私の見たい物を見せてくださる方と結婚すると、そこにおいでの方々に伝えてください」
翁は「いい提案ですね」と承知した。
その日の夕暮れに、翁は姫の提案を5人に伝えた。
そして姫は、5人にそれぞれ「見たい物」を伝えた。
貴公子達は「まかせてください」と、余裕の笑みさえ浮かべながら去っていった。
課題がどれだけ厄介かも知らずに……